零式文章

□生への執着
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敵地より、君を想う。



『生への執着』



諜報活動で敵地に潜入なんて、特に驚く事じゃない。
情報収集か、もしくは敵を混乱させるのか、はたまた暗殺なのか。どれが目的だろうと、敵地への侵入から始まるのだから。

「死にたくないなら、死にたくないと心の底から願う事だな。読みかけの本があるからとか、食べたいモノがあるからとか、些細なモノでいい。心の底から願えば、自ずと生き残れるさ。」

表向き落ちこぼれとされる9組の死亡率が何故高いのか。それは諜報活動をこなしているからであって、決して力不足だからという理由からではない。前線に立つ奴らが戦い易いようにする為に影で必死に戦う、それが9組。

「俺、こう見えても意外と生への執着心は強いんだぜ?…見えないって酷いなぁ。」

敵地に侵入してから目標を達するまでも危険は高いが、まず侵入するという地点で命を落とす仲間も多かった。白虎と朱雀の戦いが激化すればするほど、警備が厳重になって侵入するのが難しくなる。

「任務中は、帰ったら好きなモノを腹一杯食べるんだとか、そろそろ寒くなってきたから衣更えしなきゃならないなと考えてるよ。笑うなよ、わりと本気でそんな事を考えてるんだから。」

戦いが始まった時に比べ、9組の候補生は随分と数が減った。定期的に補充はされるものの、それでも間に合わない。戦いが始まってから、9組は欠員ばっかりだ。

自分が初めて9組に配属された時に一緒だった奴らは、もう顔も思い出せない。名前を墓地や死亡者リストで確認するぐらいだ。こいつは、俺と一緒の時期に9組に配属されたのかって。

「…好きな、というか気になる子がいるんだ。真面目なくせに何処か抜けててさぁ、目が離せないっていうかなんていうか。一緒にいると心が落ち着くというか、良く分からないけどそんな子がいる訳。任務中は、一番ソイツの事を考えてる…かな?帰ったら、もう一度話がしたいなって。だから、笑うなって!」

つい最近仲良くなった、0組の候補生のエース。気が付いたら彼の事ばかり考えている。
次はこの話をしてみようかとか、あの話をしたらどんな反応をするのだろうかとか。頭が考えているのが常に彼の事ばかりで、自分でも呆れてるぐらいだ。

難しい任務も、最前線に立つ彼の為になるのならばと考えればやる気が出た。彼の為に自分が出来る事といえば、少しでも戦い易いように敵を掻き混ぜるぐらいで。

失敗は、失敗だけはしたくなかった。

「もうすぐ時間、だな。さっさと任務達成して、魔導院に帰るとしますか。」

土産としてチョコボがプリントしてあるハンカチでも渡したら、エースは喜んでくれるだろうか?

そんな事を考えながら見上げた空からは、雪がチラチラと降って来ていた。どうりで、寒いと感じるはずだ。

「無事帰りついたら、おかえりって言って欲しいな。それだけで、俺は…―。」

きっと、頑張れるから。


【終】

ナギ君に夢見すぎてる気がするが、気にしない。大好きです、ナギ君。

ナギ君が時々BASARAの佐助と株って見えるのは、きっと彼が諜報部だからなんでしょうね。うん。

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