零式文章

□風邪
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馬鹿は、風邪をひかないんじゃなかったのか?



『風邪』



ナインが、熱を出した。

「なんでこんなに風邪を拗らせたんだ!マザーは少しでも体調に異変を感じたら見せに来なさいって、言ってたじゃないか。」

「うるせぇ…、頭に響くからキャンキャン騒ぐんじゃねぇ…。」

いつもより少しだけ遅く教室に入って来たと思ったら、ナインはいきなりその場で倒れた。
倒れて気絶して力が抜けてしまった彼を力のあるキングとエイトが二人がかりで保健室へ運んで行くのを心配そうに見つめながら、まぁ体だけは頑丈だから大丈夫かとすぐに頭を切り替えて読みかけの本を読む事に集中した。

だけど。

「何が僕が側にいないと脱走する、だ。脱走しようが何しようがナインの勝手だけど、それでまた倒れたらどうするつもりだ。また周りの人に迷惑かけるつもりか?」

「だから、うるせぇって…。」

エイトが慌てて教室に戻って来て僕を呼ぶもんだから何かあったのかと思えば、ナインがおとなしく寝てるのを嫌がって暴れてると。それを聞いた時、思わず頭を抱えてその場に踞りたくなった。

「そもそも、なんでマザーが忙しい時に倒れたんだ?わざわざそれを狙ってたのか?授業サボりたいからって、それはないだろうに…。」

「倒れたくて、倒れた訳じゃねぇ…。」

本当に具合が悪いらしくて返事に覇気がないナインに、ハァと僕はため息をつく。
マザーが忙しくなければ、すぐ風邪なんて治してくれただろうに。けど、マザーは緊急で入った会議とやらで忙しい。言えば来てくれるのだろうけど、彼女に迷惑かけるのは嫌だ。それはナインも同じらしく、マザーを呼ぼうという話は出てこなかったし、しなかった。

要するに大人しく寝てるしかないのだ、体調を良くするには。

「脱走されてまた倒れたりしたら困るから、しょうがないから側にいるよ。…自由時間の間だけ。」

「自由時間だけかよ。今日一日側にいるよぐらい言えよ、オイ。」

授業はサボりたくなかったから僕なりに譲歩していったつもりだったけど、ナインはお気に召さなかったらしい。
口を尖らせながら体を起こすもんだから、具合悪いんだから寝てろよとナインの体を押せばすんなりベットに横になった。普段なら嫌な事は全力で嫌がるのにそれがないという事は、今日は本当に具合が悪いんだろう。こんなになるまで放置してたなんて、ナインは本当に馬鹿だ。

「早く元気になれよな。なんか、調子狂う。」

「…おう。」

結局。

僕が行こうとすればナインが体を起こすので、その日はずっとナインの側にいた。
保健室に来る際に読みかけの本を教室に置いて来てしまった事を、今では凄く後悔している。持って来てれば、きっと今日のうちに読み終えられたはずだったから。

「具合悪い奴は、沢山寝るのが仕事だぞ。なんなら、子守唄でも歌ってやろうか?」

「風邪が治ったら覚悟しろよ、テメェ…。」


【終】

マザーなら、風邪ぐらい簡単に治してくれるでしょう。なんたって戦闘不能も治してくれるんですから(笑)

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