零式文章その2

□願う
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目を覚ましたら、とりあえずお前が死ぬ事なく帰還した事を喜んでいる事を伝えよう。そして、思いっ切り抱きしめてやろう。

しかし、その後はお説教だ。



『願う』



「僕は、隊長の事が好きだ。」

真剣な顔をして、そう言うエース。まさか彼にそんな事を言われる日が来るなんて、思いもしてなかった。

自分はこの子達の指揮隊長で、それ以上の関係は築いてはいけないと何処かで線を引いていた。ひっそりと胸の奥に芽生えた想いを、見て見ぬ振りをしていた。
しかし両想いとなれば別なはずだと、何処か不安そうな顔をして私の返事を待っている彼に、フッと笑って見せる。

「私も、エースの事が好きな様だ。」

そう言った時の嬉しそうなエースの顔は、今でも強く記憶に残っている。
いつも無表情に近い顔をしているエースの、嬉しいという感情が表面に強く出てる笑顔だ。この笑顔は、きっと珍しいモノに違いない。

「僕、頑張るよ。氷剣の死神の隣に立つのに相応しい人間になる。」

「そんなに力む必要などない。それに私が氷剣の死神と呼ばれていたのは、昔の話だ。」

絶対に頑張るから!と笑顔で言うエースの頭を撫でながら、無理なんてする必要などないと言ったのは、ついこの間の話だ。

…今では、何故あの時にもっと強く彼を止めなかったのかと後悔している。

「エース…。」

眠るエースの頬に触れながら、私はため息をつく。

今回彼は、軍神を召喚したのだそうだ。予想外の場所で敵の伏兵と遭遇し、このままでは予定されていた作戦を遂行するのは難しいと、任務変更を皆が考えた時だった。

「我が命を糧とし、我が呼び声に答えよ!我が前に立ち塞がりし、敵を殲滅せよ!!」

エースが召喚した軍神オーディンによって、敵は一人残らず殲滅された。
それによって0組は予定通り任務を達成し、今回の作戦も朱雀の勝利で幕を閉じた。しかし、

「いつから、お前はこんな無謀な戦い方をするようになった?前のお前なら、無理なモノは即座に諦め、すぐに次へと行動を移していただろうに…。」

一つ前の任務では、敵が多いから迂回しようという周囲の提案を聞かずにそのまま突っ込んだ。任務はちゃんと遂行されたが、エースは大怪我をして帰ってきた。確か二つ前の任務でも、だ。

どんなに嫌がらせの様な無理難題でも、0組なら完璧にこなす。その事によって0組の名と評価は、朱雀の中で最高のモノになった。
この事は、指揮隊長の私は喜ぶべきなのだろう。しかし、素直に喜ぶ事が出来ない。

任務を達成する代償に、愛しいエースが傷だらけになって帰ってくるのだから。

「エースは、この頃任務を達成するという事に固執しているように感じるのです。何か、心当たりはありませんか?」

このままでは、いつか取り返しのつかない事になってしまいそうで…。

涙を浮かべながら訴えてきたクイーンに、気にかけておくとしか私は答えられなかった。
彼女に言われるまでもなく、エースの異変には気付いていた。彼がこんな無謀な行動ばかりとるようになったのは、私と想いを伝え合った時からだ。

「お前が変わってしまったのは、やはり私のせいなのか…?」

眠るエースの頭を撫でながら、そう呟く。

エースは私の隣に立つのに相応しい人間になると、あの時言っていた。それがこの頃の無謀な行動をとる理由だとしたら、やはり原因は私にあるのだろう。

「任務を、全てこなそうとしなくていい。生死をさ迷うぐらいの大怪我を負うぐらいなら、任務なんて放棄したって構わない。エースがこうやって傷ついている姿を見るのに比べれば、任務を失敗した事で周囲から何か言われたとしても、決して苦にはならない。」

エースの頬を撫でる。暖かい。
しかしこの暖かさが失われる時が来るかもしれないと考えるだけで、気が狂いそうになった。今すぐにでも彼を誰の目も届かない場所へ隠してしまいたくなる。

「愛してるよ、エース。任務を失敗したぐらいで、この想いが変わる事は決してない。それは、ありえない事だ。」

愛しい君が、これ以上傷つく事がありませんように…。


【終】

カヅサあたりに昔のクラサメの話を聞いて、与えられた任務は完璧こなさなきゃあの人の隣に立つのに相応しくないとか思っちゃってるエース君がいたりして。

そんなエース君は、隊長に説教されてその考えは間違ってるって指摘されて考えを改めると良いよ。

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