零式文章その3

□睨み合う二人
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遠慮してるんじゃないかって?

どこがどうなってそうゆう結論に至ったのか、僕とじっくり話をしようか。


『睨み合う二人』


外局にいる頃から、それは変わらない光景だった。

「俺の方がぜってぇ強いぜコラァ!」

「ハッ、私の方が強いに決まってんだろ?馬鹿を言うんじゃないよ!?」

好戦的で負けず嫌いなナインと、同じく好戦的で負けず嫌いなサイス。

この二人は事あるごとに喧嘩をしていた。
喧嘩の理由のほとんどは、いつもどっちが強いか。力と体力はナインが上でも、素早さと魔力はサイスの方が上。お互いがこの場面では自分が上回っていたと主張するため、毎回決着がつかない。
マザーに迷惑がかかるといけないからって、二人が武器出して決闘を始め時点で誰かしらがこの二人を止めに入るのが僕等の暗黙のルールだった。最初のうちその役目をこなすのはクイーンやキングだったりしていたのだが、いつもナインとサイスが僕の目の前で喧嘩するもんだから、いつしか二人を止めるのは僕の役割になってしまった。

「なんだとコラァ!?喧嘩なら買うぞ、コラァ!!」

「ハッ、それはこっちの台詞だよ!」


そしてそれは、外局から魔導院に生活の場を移した今も変わらない。変わらないのだが、

「テメェに任せるなんて不安だ、コラァ。エースは俺が守るぜ!」

「何言ってんだい、アンタに任せた方が不安だよ。エースは私が守るから、アンタは引っ込んでな!」

二人の喧嘩の理由が変化して、僕はちょっと困惑している。どうして二人は僕を守るのは自分だと主張しあっているのか分からないし理解出来ない。

「別に僕は誰かに守ってもらわなくても大丈夫だから、そんな事で喧嘩しないでくれ。」

また始まったのかと目の前で睨み合う二人に呆れながら、僕はため息をついた。

「僕だって0組の一員だ。自分の身ぐらい自分で守れる。」

「何言ってんだ、体力ねぇ癖に。テメェは、黙って俺に守られてろ。」

「私より守備力ないヤツが、何言ってんだい。エースは、黙って私に守られてな。」

必要ないと言っても、二人は全く聞く耳を持たない。ナインもサイスも二人して黙って自分に守られてろと言い、その後再び僕を守るのは自分だと睨み合いの喧嘩をするのだ。

今回も例外なく同じパターンの反応をした二人に、毎回同じ事してよく飽きないよなと呆れる。毎日同じ内容の喧嘩を見てきた僕としては、いい加減少し飽きてきた。

「MPないアンタじゃ、万が一エースが怪我をした時にMP切れを起こしてすぐにエースの怪我を回復してやれないんじゃないかい?エースの事は私に任せて、アンタは引っ込んでな。」

「まずエースに怪我させるかもって心配してる時点で、テメェは俺には勝てねぇよ。俺はエースが怪我しねぇように壁になるから、テメェが心配するような問題は気にする必要はねぇぜコラァ!俺の方がテメェより体力あるからなぁ…、俺の方が壁役には適任だ。だからエースの事は俺に任せて、テメェが引っ込んでろ。」

フフンとナインが得意そうにニヤリと笑って、サイスが一瞬悔しそうな顔をした。体力の事を持ち出されれば、サイスは少々不利になる。しかし、そこで黙るような彼女ではない。

「アンタみたいな脳筋、敵の罠にハマッてエースを危険な目に合わすだけさ。」

「ンだとコラァ!俺はそこまで馬鹿じゃねぇぞ。敵の罠とそうじゃねぇのぐらい識別できるぞコラァ!!」

「この前、魔導アーマーが待伏せしてる所に突っ込んだのは誰だい?そんなヤツに、エースは任せられないね!」

今度はサイスがフンと鼻で笑い、ナインが悔しそうな顔をした。しかしそれは一瞬の事で、彼は烈火の如く怒り出した。そしてお互いに武器を手にとり決闘。これもいつもと変わらないパターン。

沸点がもともと低い二人だから、これでも長くもった方だ。酷い時は顔を合わせるだけで決闘に突入した事もあるのだから。
口で言い争うより戦った方が早いとの事だろうが、周りはいい迷惑だ。

「付き合ってられないな…。」

ため息をついて、戦い始めた二人に背を向けて僕は歩き出す。
周りに被害が出る前に二人を止めなきゃいけないと言うのは分かっているのだが、こうも毎日同じ事を繰り返されるとやる気もなくす。そんな僕の憂鬱とした気持ちも誰か分かってくれ、お願いだから。

「…あ。待ちな、エース!一人で行くのは危ないって、何度言ったら分かるんだい!?」

「待て、止まれエース!俺を置いていくんじゃねぇぞ、オイ!!」

直ぐさま僕を追い掛けて来たナインとサイスの二人に、少しぐらい一人にしてくれれば良いのに…と僕は今日何度目かのため息をついた。

【終】

ナインとサイスが喧嘩してて、よくエースが止めに入った的な文章を小説にみかけてから書きたかったの。
小説はサラッと立ち読み派だから、内容はよく分からない。でも泣きそうになったよ(泣)

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