零式文章その4
□約束した未来U
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エミナに抱き着いた時、なんかとても良い香りがしたんだ。
後で、どんな香水つけてるのか聞いてみようかなぁ…。
『約束した未来U』
一年前に離れ離れになった世間一般的に幼馴染みと呼ぶのであろう関係のクラサメと再会し、なんか色々フラグというか問題が途中発生したけど、まぁこれからはきっと穏やかな日々が過ごせるんだろうと思っていた。いや、思いたかった。
…そんなの無理だって分かりきった事じゃないかとか言わないでくれないか?泣きたくなるから。
「クラサメなんか嫌いだ!こっちへ来るなぁっ!!」
「安心しろ。俺はエースをこの上なく愛してる!だから、問題はない!!」
僕は今、全力でクラサメの魔の手から逃げている。ここの所、毎日。逃げ切らなきゃ、きっと色々な意味で僕の身が危ないから。うん。
「ちょ、ちょっと。私を間に睨み合わないでよ。」
ただ今日はちょっと朝から体がダルかったから、逃げ切れる自信がなかった。だから逃げている途中で出会ったエミナを盾に、これ以上僕に近づくな!って威嚇している。
「エミナは僕を見捨てるのか!?そんな酷い人とは思わなかった!」
涙を浮かべて叫ぶと、そんな事はしないわよとエミナは困ったように笑った。
だよね。エミナはきっと僕を見捨てないと思った。だって優しいもの、エミナは。
「エミナ、そこをどけ!お前のデカイ体が邪魔で、俺のエースの可愛らしい姿が見えない!!」
「デカイとは失礼ね、デカイとは。私はそんなに大きくはないわよ。逆にエースちゃんが小柄なだけなんじゃないかしら?」
今にも氷剣を出しそうな勢いで怒り狂っているクラサメに、平然と言い返すエミナ。そんな彼女の姿に、カッコイイなぁとちょっと憧れた。
でも一番に憧れてるのはマザーだから、僕はマザーみたいな大人な女性になりたいんだ。うん。
「…で、今日は何をしでかしたのかしら?クラサメ君。この子、すっかり怯えてるじゃない。」
どさくさに紛れてエミナに抱き着いたら、それをクラサメに怯えてるからの行動と勘違いしたようで。時と場合によっては容赦しないわよと、彼女はキッとクラサメを睨んだ。
「…何って。クリスタリウムで高い所にある本を取ろうとして一生懸命背伸びをしてるエースにムラッときたから、押し倒してそのまま喰おうとしただけだが?」
それのどこが悪いんだ?と不思議そうな顔をするクラサメに、充分大事だろう!と思わず僕は叫んでしまった。
ただ背伸びをしてただけなのに、なぜムラッとされなきゃならないんだ。これがエミナとかスタイルがいい女の人だったら、僕も分かる。なんでムラッとする対象が僕なんだ。訳が分からない。やっぱりクラサメは、マザーに一度頭を診てもらった方がいい。きっと悪い所があるはずだ、沢山。
「…クラサメ君、駄目じゃないの。」
エミナはため息をついた。
僕の言葉はクラサメには届かないが、きっと友人のエミナの言葉は届くはず。そしてクラサメは自分の行動の異常さに気付いてそれを直してくれるだろうと思っていたのだが、
「いきなり初っぱなから、クリスタリウムはレベルが高すぎるわよ。ちゃんと場所は選んであげなきゃ。…最初なら、やっぱり寝室でしょ。」
エミナの口から出た言葉は、僕の予想の斜め上をいくモノだった。
「人目が気になるから、か?クリスタリウムと言っても、かなり奥まった場所だったぞ?だから、人目を気にする必要もないし平気なはずだろ。」
訳が分からんていう顔をするクラサメに、分かってないんだからとエミナはため息をついた。
「最初は、やっぱり雰囲気とか重要なのよ?最初だからこそ、そうゆうの大事にしてあげなきゃ。」
「……。」
「…あ、今凄く面倒臭そうな顔したわね?まぁ、分かりたくないならそれもいいわ。勢いのまま強姦まがいの事して、今後二度と触れる事が出来なくなってもいいなら好きにするといいわ。私は、クラサメ君を止めないわ。」
「そ、それは困る。」
これからは気を付けると反省し出したクラサメに、よしっと満足気に頷くエミナ。
僕はといえば、こっそりと静かにその場から離れる事にした。
僕の話を全然聞いてくれなかったあのクラサメに反省をさせるというのは凄いと思うが、これでは僕の貞操の危機は去っていない。
マズイ、これは非常にマズイ…!!
「エース!」
クラサメに声をかけられ、ビクッと僕は体を震わせた。ヤバイ、気付かれてしまった。
「さっきは、悪かったな。」
クラサメはニッコリと笑った。
「さっきは場所を気にしてやる余裕がなくて悪かった。あまりのエースの色っぽさに、つい我を忘れてしまったんだ。許してくれ。…さて、場所はどっちがいい?俺の部屋か?それともお前の部屋にするか?」
「た、助けて!マザァアアアア!!」
僕は泣き叫びながら、マザーの所まで逃げ出した。
「この子と同意の上ならともなく、それなしでの婚前交渉はダメでしょ。婚前交渉は。…いい加減にしないと、別れさせるわよ?」
そして、マザーにこれでもかとクラサメに釘をさしてもらった。とりあえず、これで僕の貞操にせまる危機は去った。
「わ、分かった…。」
悔しそうな顔をしながらも頷くクラサメに、やっぱりマザーは凄いと思った。
【終】
前にあげたクラA♀パロの続きとのリクエスト。
…こ、こんな感じになりましたが、いかがでしょうか?やり直せとか遠慮なく言ってくださいね!
リクエスト、ありがとうございました。