創作小説
□炎の継承
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咽かえるような熱気が気管を侵す。
人体の焼ける異臭、ねっとりとした血の匂い。
今まで必死で目をそらしてきた世界が目の前にはあった。
腕の中には幼い少女。すでに息はしていない。その表情はいたって安らかで…それが余計に己を奮い立たせるものがあった。
なんで…なんでなんで!
頭の中を駆け巡るのは自分ではない誰かに必死で問いかける言葉のみ。
なぜ彼女は死んでいる?
なぜ自分はこんなにも無力なのか?
なぜもっと早く決断しなかったのか?
男が何かを叫んでいる。
なぜだろう、ひどく遠くから聞こえる。
考えることを放棄した頭が僅かな力で必死に自分自身に警告をしているのを、どこか遠くから自分を見ているように冷静に理解した。
刀を握れ。
このままでは死んでしまうぞ。
俺は死にたくない!
男たちが刀を振りかざした。
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