□silver fang(ゾル家執事夢)

□お約束事
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はたから見れば、その光景は異様としか言いようが無かったかもしれない。



脳天から肩にかけて数十本の針を刺している目つきのヤバイ大男が、この場に似つかわしくないようなゴシック調の服に身を包んだ見目秀麗な細身の男の首をひっつかんで引きずっていくその光景。

しかもその引きずられてる方の細身の男は、先程"あの"トンパを片手で縊り殺し(殺してないぞ、まだ。)、その後も銀色に光るあの鷹のような目で獲物を物色していた(違う、誤解だ。)と囁かれる超危険な男だ。




―――喰うの?喰うのか?どっちが?何を?

…やめろ。見てはいけない。関わったら死ぬぞ。



と…、周りの受験者達は口々にそう言い合い、その光景から目を逸らす。

その場にいた人間で、最後まで彼らの動向を見ていた者は皆無だったという。





*********

「…で?説明してもらうよ?何でキミがここにいるの?」


通路の隅っこ。壁際に押し付けられてイルミ様から怒気を孕んだそのセリフを投げつけられる。


人目からオレを隠すように、通路側に背を向けているイルミ様。
いつもと顔はまったく違うイルミ様だが、しかしそのせいでイルミ様の表情からは『怒り』の感情がいつもよりはハッキリした形で見え隠れしていた。


オレは青ざめた。


―――暗殺一家ゾルディック、その長兄であるイルミ様の激しい怒りの感情。恐ろしくて、イルミ様の顔が見れない。


カタカタと体が震えるのを抑えることができず。
額からは、知らず知らずに一筋の汗が零れ落ちた。



「…アゲハ。黙ってたらわからないよ?」

「も、申し訳ございません…、イルミ様…」

「オレは謝罪が聞きたいんじゃないんだけどな」

ふう、とイルミ様のため息が耳に届き、オレは反射的に帽子を脱いで頭を下げた。


「申し訳ございません!イルミ様が試験を受験されるのであれば、私も同じく試験を受けるようにとゴトーから指示があり…。奥様からも許可をいただいたので、勝手ではございますが参加する事にいたしました。
事後報告になってしまい大変申し訳ございませんでした…」


すまん、ゴトー。
いきなり名前を出す事になってしまった。



「……ライセンスが無ければ侵入を許可しない国や場所も世界にはあるとの事。もし今後イルミ様に随伴するご機会をいただいた際に、ライセンスを持たない私のせいでイルミ様にご迷惑をかけないようにとのゴトーの配慮です…」

「ふーん…」

「あ…、しかしっ…、そのような指示があったとはいえ試験参加への最終的な判断を行ったのは私です。
罰をお与えになるというのならば、どうかゴトーではなく私めにお与えくださいませ!」

「うーん…」


腕を組んで考えるしぐさをするイルミ様。いつものお姿ならそれも決まるところなのに、全身に針を刺したごつい大男がするそれはどうにも………。

さっきとは別の意味で怖いんだが…;


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