□silver fang(ゾル家執事夢)

□silver fang(過去編)後編
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「……イルミ様。我々使用人にまでこのように目をかけていただけるのは大変ありがたいのですが―――今後はくれぐれも程々に。」

「うん。ごめんゴトー」



部屋の入り口に立ち、メガネを上げながらゴトーが呟く。
イルミはゴトーの隣に立って、ベッドの上のアゲハを見ていた。

開いてしまった傷の痛みと原因不明の高熱に目を回し、家の専属医から処置を受けるアゲハを。



「ちょっと無理させすぎたかな」

「ちょっと…ですか?ずいぶん物音が激しかったと聞き及んでおりますが?」

「うん。だってアゲハがあんまりに可愛くてさ。興奮したんだ」

「……そうですか……」


さらりと言われてしまい、ゴトーは困る。

私はそれにどう返答すればいいのでしょうか、と。

かけていたメガネをもう一度クイッと持ち上げた。



「……とにかく、これから一週間ほどは絶・対安静にさせてください」


困り果て、結局さっきの言葉は聞かなかったことにした。


「これ以上無理をさせますとキレイに治るものも治りませんし、まず第一にイルミ様のようなお方がこのような場所へ足を踏み入れてはいけません」

「うん、知ってる。だからごめんってば」

「でしたらよろしいのですが………イルミ様?」


言った矢先からイルミはつかつかと部屋の中へ入ってしまう。






「…アゲハ」


傷を看る年老いた医者の邪魔にならないようそれを避けて枕元に立ち、イルミはアゲハの頬をそっと撫でた。


イルミの冷たい手の感触。

それを受けて、アゲハがふと意識を取り戻す。



「…ん………イルミ、様…」


「ん。…傷、ちゃんと治して早く戻ってきなよ、アゲハ。
ゴトーが側についてるとうるさくて仕方ないんだ。やっぱりオレの執事にはお前が一番良い」


そう言って今度はさらりと頭を撫でる。


オレがお前を捨てることなんてないから、と囁きながら。




するとアゲハは熱で辛そうにしながらも―――「はい」とわずかに笑った。

嬉しそうに、その瞳には涙を浮かべて。




「…必ず戻ります。必ず…。私でよろしければ…ずっとお側にお仕えしてまいります…我が主…」


「うん。いい返事だ」



待ってる、と呟いて、イルミはベッドに沈むアゲハの唇に己のそれを重ねた。




終わり!
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