□silver fang(ゾル家執事夢)
□はじまり
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地下100階を差して、エレベーターが止まる。
エレベーターの扉が開くと同時に、そこに集まっていた人間達が一斉に、現れたオレへと目を向けてきた。
扉の向こうは薄暗い地下道。決して広くもないその場所に300人超の人間がひしめいている。
………臭い、ムサイ。なんだこれは。死ね。
オレを見るな。汚らわしい。
いつまでもオレを観察している連中に鋭く殺気を投げつけて、半強制的に視線をオレからはずさせる。
…くそ、オレはこれからこんな奴らの中でしばらく過ごさなくてはならないのか?理性の糸が切れないようにするので精一杯だぞ。
知らないうちにため息が漏れた。
できるだけ見ないようにすればいいか…と、被っていた帽子のつばを下げて視界を隠す。
そしてオレは、人混みを避けるように壁際へと移動を開始した。
「あぁ、待ってください」
「は?」
呼び止められ、多少イラつく。
しかし敵意の無いその呼び声にしぶしぶと振り返ると、ダブルのスーツを着込んだ豆のような人間が足元に立っていた。
「ハイ、番号札ですよ。どこかにつけておいてください」
「…ああ、ありがとう」
番号札を差し出され、案内人だったのかと納得する。
受け取った円型の札には332番の数字。
とりあえずはそれを胸につけて、オレは壁際に座り込んだ。
「くそ…っ」
早くイルミ様を見つけないとオレの神経が持たん。
かといってこのいかめしい男共の人混みにまぎれてまでイルミ様を探す気にはなれず、オレは頭を抱えた。
……何でこんな事になったんだ。
来て早々にもかかわらず、オレは心底ここへ―――ハンター試験を受けに来た事を後悔した。
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