□silver fang(ゾル家執事夢)
□ヌメーレ湿原の攻防・2
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「…あれ。」
試験官を含む一団にくっついて霧の中を走っていたギタラクル―――もとい、イルミ。
さっきまで近くを走っていたはずのヒソカの存在が、いつの間にか集団の中から消えているのにふと気がついた。
『霧が出たらちょっと遊んでくるよ◇』
……と、湿原へ入る前に言っていたヒソカの言葉を思い出す。
『好きにすれば?』などとそのときは軽く流していたのだが……。
「アゲハまで、あんな後ろで何を遊んでるんだろ?」
早々にキルアにバレたあの馬鹿は、キルアに付いて先頭付近を走っていたんじゃなかったのか。
円で探ったアゲハのオーラ。立ち止まっているのか、それがどんどん集団から離れていくのを感じる。そしてアゲハの近くにはヒソカのオーラも。
事態を悟ったイルミは呆れたように「はぁ」とため息を吐く。
そしてごそごそと懐から携帯を取り出すのだった。
********
「ヒソカ!!てめぇ、さっきからなんでオレ達ばっか狙ってきやがる!?」
湿原の奥深くに取り残された数十人にものぼる受験者達。
薄くかかる霧の向こうには、パラパラとトランプをシャッフルしているヒソカの姿がある。
そのヒソカに向かって、オレの背後からレオリオが叫んだ。
「クク…キミ達っていうか…ボクが遊びたいのはそこの眼帯のお兄さんだけであって、キミ達みたいな雑魚に用事はないんだよね。そのお兄さんがボクの相手をしてくれるって言うなら、キミ達の事は見逃してあげてもいいよ?さっさと行ったらどうだい?邪魔だし。
…まあキミ達じゃこの霧の中、本隊に合流できるとも思えないけど◆」
「ふざけんな!!見逃してやる、だと!?何様のつもりだてめぇ!?」
「おい…!」
「レオリオ!止せ!!」
ヒソカの周囲では他の受験者がすでに数名、血まみれでその身を大地に転がしている。
自らそれに仲間入りする必要など無いと、オレの背後より身を乗り出し吠えるレオリオを手で制止する。クラピカも、"挑発だから乗るな"とレオリオを止めていた。
だが、オレ達のほかに残っていた受験者達は、先程のレオリオの叫びに同調したのか武器を手にヒソカを取り囲み始める。
「嘗めた事言いやがって…。この霧の中じゃ、テメェだって本隊への合流は不可能だろうが」
「そうだそうだ!お前だってオレ達同様、ここに取り残された不合格者じゃねぇか!」
「やだなぁ、キミ達とボクを一緒にするなよ。冥土の土産に覚えておくといいよ。奇術師に不可能は無いってね◇」
「ふざけんな!!何が冥土の土産だ!」
「ち…莫迦共が」
茶番だ、と吐き捨てた。
この間にも試験官を含めた先頭集団はどんどん遠ざかっていってる。キルア様も、もちろんイルミ様も、だ。
オレだけがこんな奴らと共に不合格だなんて、笑えもしない。
――――まったく、イライラさせやがる。
このピエロも、相手と自分の差も理解できていない周りの雑魚どもも。
(全員まとめて始末してやろうか。)
ミシリと拳に力がこもる。
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