□原作沿い夢 double style(グリードアイランド編)

□それぞれの思惑
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マチとシャルナークとノブナガの出て行った扉―――今はもう閉じられてしまったオートロックの扉ごしに、感覚を研ぎ澄ましてオレは奴らの去っていく気配を探った。

だけど、途中で気配を"絶つ"こともせずにエレベーターを降りて去っていくとこを見ると、ノブナガの言った『今回は見逃してやる』って言葉も、嘘偽りなく本心からだったんだろう。


……ウボォーギンもそうだったけど、そういうトコ結構好きだぜ、ノブナガ。

まあそれでも、クラピカのところに戻るときは尾行を警戒しておく必要はあるだろうけどな。


扉を眺めてそんなことを考えていたら、オレの中のゼロもなにやらしみじみと頷いているのが感じられた。

「…どーした?ゼロ?」

『ん?……ううん。あれが幻影旅団なんだなーって思って』

「はぁ?」


『えっと……、最初会ったときもそうだったけど、A級賞金首っていうわりにはそんなすごく悪いことしてる人たちには見えないなぁって…思ったから…』

身に纏うオーラのよどみのなさはさすが歴戦の強者って感じですけどね、と付け加えてゼロは言う。


「……まぁ、な。世の中何が正義で何が悪かなんて主観的なものでしかねー。あいつらのことはお前が思うとおりに評価すりゃいいさ」

『そうですね…。僕にとっては、ジャズだってわがままで意地悪でバカでどうしようもない弟だけど……
見る人が見たらお金次第で「始末屋」なんて物騒な仕事を請け負うような冷酷で残忍な人間ってことになっちゃいますしね…』

「おい。お前なにどさくさにオレのコトこき下ろしてんだ」

『あっ。…エヘ』

「えへ、じゃねぇよ。ったく…」




確かに、"オレにとっちゃ"長い付き合いの悪友みたいな連中だけどよ。

――――あの夜にだって、あのチビどもだけじゃなくあいつらも、オレの事を想っていろいろ手を打ってくれようとしたこと……ちゃんと覚えてる。



とはいえ、実際やりてぇコトや欲しいもののために盗みも殺しも躊躇わねぇ奴らだ。クラピカだって仲間を殺されて、だから奴らを仇として追ってる。
被害者・遺族連中にしたら悪夢みたいなもんだろうし、世間的に見りゃあいつらが「悪」なのは間違いねぇ。


そりゃあ、オレの目を通してしかまだまともに奴らを見ていないゼロにとっちゃ、そういう見方になっても仕方ねーとは思うケド…。





…………あー、そっか。
戦りづらくさせられたかな、と思う。
今回あいつらがすんなり手を引いたのも、あるいはそれが狙いだったのかもな。


あいつら―――「幻影旅団」とは、いつかまた必ずやりあう時が来る。
でもその時はそうとうメンドイことになるだろう。いろんな意味で。

オレだけが狙いならともかく、もしもまたクラピカとあいつらが戦うってなった時――――


お前がきっちりそこのところ割り切って、あいつらを"敵"とみなせるのかどうか………今からちょっと心配だぜ?ゼロ…。




『ねぇねぇジャズ!それよりほら、ゴンとキルアに連絡しないと!ね!?』

「…あ―――…そーいやそうだったな…。めんどくせー…」


急に黙り込むオレを見て、自分の軽口のせいで機嫌を悪くしたのかと勘違いしたっぽいゼロが、あせあせと話を切り替え始めた。

言われて思い出したが、確かにそういう約束してたっけ…。ついでにゾラのババァにも廃業の連絡しとかねーと。


…と、オレはポケットに突っ込んでおいた黒いケータイを取り出して、次いで反対のポケットからごそごそとあのメモを探し出す。
そして、メモにある汚い字で書かれた二つの電話番号を前に、少し考え込む。


…………どっち押すか。



「………………。 やっぱめんどくせーんだけど」

『照れくさいのは分かりましたから早く!』

「……ちっ」


バレてやんの。

『さあさあ!』とせかすゼロの勢いに圧されて、オレはしぶしぶメモにある番号をケータイでコールした。



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