□原作沿い夢 double style(グリードアイランド編)
□弔いの花
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オレの挑発にだって簡単に乗っちまうような奴だった。
クラピカなら間違いなく一発であの野郎を挑発に乗せて、自分のペースに引き込めちまうだろう。
あの薄暗い地下室で、「借りを返さなきゃなんねー野郎がいるんだ」っつったあの野郎の目を思い出しゃわかる。
爛々と熱く燃やしたリベンジの炎。
あの時点ですでにあの野郎はクラピカっていう死神に憑かれていた。
カッカしたまま勝てる相手じゃねーだろうに。
オレと遊びでやりあってた時ならともかく、クラピカ相手の"それ"はまさしく命取りってやつだぜ、ウボォーギン…。
ま、オレは忠告したし、それで本当に命を落としちまおうがそれはお前の自業自得だと思うけどな。
……ただ
それでもせめて、お前を知る1人として――――
弔いに、一輪の花ぐらいは。
*******
話の途中で被って来た、部屋に良く通る凛とした声。
オレの前に座っていたゴンは「へっ!?」と後ろを振り返り。
キルアも同じく振り返って、そこに立っていた顔を見て「げっ!?」と零す。
ゴンとキルアの背後。部屋の入り口―――今はもうドアは吹っ飛んでそこにあるのは「入り口」とはちょっと言えないようなただの大穴だけどな―――に立っていたのはもちろん…
「クラピカー!!」
「ああ」
振り返ってクラピカの姿を認めるなり、ゴンが弾けるように立ち上がった。
クラピカの元へと駆け寄って、クラピカの快方を自分の事みてーに喜んでた。
「具合はもういいの!?」
「ああ、もう大丈夫だ。ずいぶん心配をかけたようだな、ゴン…。―――ところで」
と、ゴンに応えてから、急に真面目くさった視線をオレに向けてくるクラピカ。
オレは座ったまま、単に肩の位置で手を振ってそのクラピカと挨拶を交わす。
視界のすみっこで、ゴンとキルアが『ヒエッ』って顔で肩を飛び上がらせてたが……、クラピカの前で話に出たのが『旅団の』なんて聞いちまったら普通そうなるよな。
「…よう、クラピカ」
「フフ…、白々しいなジャズ。お前なら私の気配にも最初から気が付いていただろう?わかっていて、私とその話をするために話題を持ち出したんじゃないのか?」
「ハッ、そりゃーさすがに勘繰りすぎだ」
「そうか?…まぁ、今ここでお前の友人を殺したその償いをしろ…と言われても私には何も出来ないし、するつもりもないがな」
「ああ?だからなんでそう悪い方にばっか取るんだよ。オレは何も責めてねぇし、言ってもいねぇだろ。
…つーか『友人』って。そもそも『友人』ですらねーっての。強化系なら単にオレにはあの野郎が一番なじみ深かったってだけの話で。
『強化系』の芽がここにあって、オレが師匠で目指すトコロを示してやるとしたら、オレにはやっぱあの野郎の話しか思いつかねぇ。身を以って知ってんだろ?お前も」
「それは…そうだが…。 ……師匠?」
「こいつらにせがまれたんだよ!!嫌ならお前もこっち来て手伝え!!」
ビシッとオレの隣の床を「こっち」と指差した。
クラピカは仕方なさそうにため息を一つ漏らしてからオレが指した場所へとすたすた歩いて来て、戸惑い無く腰を下ろす。
ゴンとキルアは部屋の壁に背中を張り付けて恐々としたままだ。
「…私にとって蜘蛛は、私の大切な故郷を―――家族を…友人を殺した憎い仇でしかない。
だがジャズ。お前にとっての蜘蛛…あの旅団の11番は、私にとってのそれと同じようにお前にとっては大切な友人の1人…だったかもしれない。
だからたとえ相手が蜘蛛……私にとっての憎悪の対象だったとしても、お前にその友人を悼むなとは私には言えないし、そのことで私を恨むというなら恨んでもらって構わない。
奴を最初に手にかけたとき、すでに私は覚悟を決めた。誰にどんな風に憎まれ、恨まれようとも……私は私の目的を果たすと」
「…だーからアレは『友人』なんかじゃ…、ってかなんだよ急に。重てぇよ、言う事が。手伝えって言った話からなんでいきなりそんな重くなんだよ。大体お前、それだとオレには恨んで欲しいし、責めて欲しいみたいに聞こえるぜ?」
「……そんなつもりは無いが……」
真面目くさった顔で何言い出すかと思えば……。
ま、旅団の連中に仲間を殺られたっつークラピカの心情もわかるし、オレもタイミングが悪かった……って、タイミング悪かったの、ホントにオレの方か?別にオレ、悪くねーんじゃねーの?
タイミング悪いのも、深読みしすぎて突っ走ってるのも、クラピカの方じゃねー?
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