Clap!
□Make it up!(パチ、パチ)
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あたしは軽い気持ちで買い物に来ていた。
街を歩いてたら、見たくないものを見てしまって。
あたしに、9999のダメージが。
(あかん、即死や)
あたしの視線の先にあるのは、間違いなく一番愛しい恋人やのに。
彼女がひとりだったら、この偶然に喜んで神様に感謝した。
やけど、神様って残酷。
隣には、どこの馬の骨とも知らん男の姿。
いつの間に、とか思うたけど、時間はいくらでもあった。
(最近仕事が忙しくて構えへんかったからな…)(自業自得なんかな…)
楽しそうにしとる姿が目に焼き付いて、離れん。
隣にいるのはあたしの筈やのに。
ああ…あたし、もうすぐフラれてまうんやろか。
*
翌日、思い切って呼び出して聞いてみた。
追求するか悩んだけど、こそこそ付き合われるんは、嫌や。
「で、どうなん?」
「昨日って…昨日?見てたの?」
あっけらかんとしとる。
隠しもせえへん。
(ああ、あたしはもう終わりやな…)
「…ぷ、あはは、あれはお兄ちゃんだよ」
「…。あんな、嘘はつかんでもええねんで。あたしはわかってる」
「嘘じゃないよ、本当。仕事でこっち来てるって言うから」
「…………」
「何ならアルバム見せようか?」
見せてもらうと、実際昨日隣にいた男が、若い顔立ちながらも家族写真に写っとった。
これで疑いは晴れた。
あたしはほっとして、喜んで、ほんまやな?!て、抱き着いた。
「あーよかった!!もうフラれるんやないかと…」
「…何?ちえさんは、私が浮気して移り気したと思ったの?」
「…あ、え、そのな…ごっつ楽しそうやったからな…?」
怒った顔も可愛いんやけど、やけど。
ひどい!
(私はちえさんのことしか想ってないのにっ)
(ごめん!ごめんて!)(…っていうか、ソレほんま?)
(……………あ!)(い、今のナシっ)
...
柚希礼音 (星組)
...