小説 陽

□狐幻丸、ここに!
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◇火具鎚忍軍


 時は戦国───

 火楽(かぐら)の国。
 その山奥の更に深くに里が在った。
 名は『火具鎚(かぐつち)の里』。
 有名なところで言えば、伊賀や甲賀等で知られる…いわゆる忍の里の一つである。
 しかし、同じ忍の者であってもこの里の存在を知る者は多くはない。
極めて小さな里だった。

 だが…

 ひと度対峙すれば二度と忘れる事は無いだろう。
 『火具鎚忍軍』彼の者達がその気になりさえすれば、伊賀や甲賀とも渡り合える…いや、それ以上とも噂される集団だった。

 ただ、彼等には唯一この方と決めた主君がいた。
 『風見 忠守(かざみ ただもり)
 火楽の国を納めており、心優しく、野心は持たず、民の幸せを第一に考えているという風変わりな大名である。
 火楽の国は代々、他国を侵略せず、他国の争いに介入しない。という理念を掲げており、その理念に惚れ込んだ火具鎚忍軍もまた代々仕えているのだ。
 故に彼等から戦を仕掛けられる事は無く、田舎な上にさして重要な土地でもない火楽の国に攻め入る国もほとんどいない為、彼等の名は極一部の者達だけが知るところとなった。

 そんな火具鎚の里から物語は始まる───
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