10/21の日記

15:36
忍たま小噺
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「おかしな夢を見たんだ」
ごろりと寝返りをうってどいが、此方を向いた(暇つぶしと称して食満から手解きを受けた木彫りを作成中だけど)寝ぼけ眼のままどいはぼんやりと此方を眺めている。
「南蛮のような格好で、髪も短くて」
「うん、」
「ここと、似たような場所で…あーでも違うな、なんだか城みたいなところだった」
「うん、」
「俺は同じ様に教師をしていて、でもお前は生徒で」
「そうなのか?」
「あぁ、」
そろりとどいの手が伸びてきた、と視界の隅で捕らえながらもキリのいいところまでやりたいと手は止めない。見計らったかのような呼吸で、腹に回された手で思い切り引き寄せられた。
「どい、」
「ん」
「危ない」
「そうだな」
「…どうしたんだ?」
引き寄せたまま顔を埋めて放そうとしない。おかしいと思いつつ、作業の手を止めて身体を捻ればそのままどいが擦り寄ってきた(いつもと立場が逆だと思ったが口には出さずに)
「夢で、」
「うん」
「俺はお前の事を忘れてたんだ、なのにお前は俺のことを覚えていて…俺が呼ぶたびにお前は少し寂しそうな顔をして」
「いいよ、どい。俺のことは忘れたっていいんだよ」
「…嫌なんだ、お前の事を忘れるなんて」
ぐずりだした子供のようにぎゅうと腹に回った腕へ力が入る。少しくぐもった声が耳に届くたび、何だか巻き込んでしまった罪悪感が小さく痛んだ。
「どい…」
「嫌だ、ようやく、お前をつかまえたのに」
「どい、俺は此処に居るから」
「夢の中で、」
「夢は夢だよ」
「それでも俺は、忘れたくない」
土井先生でも土井半助でもない、一人の男の目とかち合う。ひくりと息を呑んだのが伝わったのか、のそりとした動作で彼は上体を起こして頬へ手を伸ばしてきた。男らしい、節くれだった手が、輪郭を撫でるように添う。微かに熱を孕んだような温かさは、先ほどまで寝ていたからだろうか。
「来世でも、会いたい」
「そんな不確かな約束なんて出来ないよ」
「現世で周りにいる者は少なからず前世で関係のあった者達だそうだ」
何処か諭すような口振りで彼はそう言うのに、寝ぼけたままを装っている。もうとっくに意識は覚醒しているくせに、と顔を包む手のぬくもりを甘受けしている己も同列か、と少し目を細めながら思う。
「ど い」
「必ず見つける」
「ん、」
いつの間にか完全に向き合う格好になっていた。
「お前を忘れていたとしても、必ず想い出す」
「……来世で会って、想い出したら、そう言ってくれればいいよ」
現世で来世の契りなんか出来ない。
言外に含ませれば意を汲んだのか、どいはそれ以上口にしなかった。そもそも己が彼と同時代に、転生できるかどうかもわからないし、記憶を持つことが出来るかもわからない。会えたらいいなと、願うぐらいだ。
「心中でもするか?」
「そんな事、シドウが許さないよ」
「そうだったな」
どいは悪びれる素振りを見せず、額に唇を寄せる。心底珍しいなと思うので手一杯な此方と対照的に、どいが薄く笑みを浮かべた(思わず顔を背けようにも両の手で阻まれて出来ない)あぁきっと顔が赤いんだろうなぁと考えながらも、目の前にいる彼は酷くご満悦のようだ。
「どうすれば忘れないんだろうな」
額から鼻へ、次いで頬へと移動していく。昼間からこんな、と顔へ熱が集まるのが嫌でもわかってのた打ち回りたくなるのに、未だに解放されない(熱に犯されたように頭は霞みがかり始める)
「ど、い」
「どうすれば、お前を縛れる?」
「そんなの、しらない」
存分に口内を撫でられた後に言われた所で満足な返答など出来はしないのに(それどころか息すら絶え絶えなのに)視線のずれすら許さぬよう、どいの手に力が篭る。何度も啄むように口を重ねては舌を這わす。
「ど、……っ は、ぁ」
「放したくない、繋がっていたいんだ。独り善がりだとはわかっていても」
「ふ ぁ、ぅ…ッ」
回らない頭の隅で触れていた感覚が離れたのがわかった。何故だか分からないが、酷く淋しそうな声音でどいが話すものだから無意識のうちにその背へ手が伸びる。あやすように背を擦ればどいは肩口に顔を埋めてきた。
「……怖いんだ、失うのが」
「人はいずれ死ぬんだよ、遠かれ早かれ」
「…わかってる」
「先の心配を今する事は無いよ。俺だって、どいと会ってから…どいと離れるのが、やだ」
先を考えて、どいが居なくなるのを考えて、思わず彼の服を握った(不安なのは此方も同じだというのに)
「…そうか」
一つ大きく息をして、どいが顔を上げた。気持ちスッキリとした顔になったかもしれない。そう安堵したのも束の間、不用意に身体を引き寄せられすっぽりと腕の中へ収められた。先程までのどいの行動と、何か一抹の予感が背を撫でる。
「どい?」
「……」
「…どい?」
「………つながりたい」
「…ッ!!な、なに、いって」
ぐいと渾身の力で押し返そうとしてもびくともしない。あぁ随分甘くなったもんだと他人事のように思いながらも顔を上げられずにいる。何処までも正直になっているどいの対応はこれ以上無理だというのに!
「ちゃんと夜まで待つさ」
「そ、ういう 問題じゃ…」
はぐらかすように口吸いをされて、今度こそ本気で殴った。


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この後、そんな弾みで押し倒された所で山田先生がくればいいと思う←
久しぶりの小噺がこんなえろす漂わせていいのかなんて思いながら何故かこうなった。たまに出る土井先生の本気はこんなもんなんだろうなぁと。いやでもちゃんとやる事は抜かりなくやってそうだよね!そんな流れで転生学パロへ続いたり続かなかったり。忘れてて想い出した反動がすごいんだろうなぁ←

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