04/06の日記

11:02
忍たま小噺
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委員会活動最中、記帳確認が終わった頃合いに三郎がやって来た。珍しいなと思っていればがしりと肩へ腕を回されてそのまま火薬庫の脇に連れて行かれる
「何か急につばくらさんと仲良くなってねえか?」
「そうか?」
全くその気は無かったが三郎からすればそうらしい、何処か不服気に眉を寄せたままだ。つばくらさんが来て、いつも連れ立っている面々の中で最初に興味を示したのは他ならぬ三郎だ。その後、やたらつばくらさんと話しているのを見かけたし三郎がかけ値なしで称賛というか目指してみたい人だと言ったのも聞いた。
「何かあったか?」
「どうして」
「お前、信頼しるだろ?つばくらさんを」
「そう、かもな。あの人は裏表がないし」
言動の裏を読むのが忍だ。とはいえあの人は忍という括りではないらしい。それ故なのか元々の性分なのか、あの人の言動に裏も表も無いのだということを、あの時実感した。
「実習中に助けられたんだ」
「あーそういやぁお前、珍しく実習中ヤバかったらしいな」

実習最中、課題を終わらせて戻る途中だった。追手の数が想定よりも多いと気付いたのは。他の連中もそうだったのかどうなのかは、終ぞわからず仕舞いだったけれど、勘右衛門はそんな追手なんていなかったと言っていた。
そんな防戦一方の中、注意力が散漫していたのだろう、足場が崩れて落ちた事に、痛みと同時に気付かされる。気を失っていたのかどうなのか、焼ける様な痛みとぼやける視界に思わず死を感じた。動かそうとした腕はろくに動かず、微かに指先が動くような感覚が遠くに感じられた程度で、満身創痍という状態だったのかもしれない。
そんな時、みじゃりという音がして反射的に目を向ければ視界の隅に影が映る。追手か、と無理やりに身体を起こそうとするも激痛で顔が歪む。躊躇いなく翳した苦無を振り下ろしたのと同時だったかもしれない
。鈍い音を立ててそいつは頭に何かを生やせてぐず折れた。
何が起きたのか、次々と現れる追手はすべて屠られていったのだということは、何とか理解出来た。最後の一人を難なく屠ったのは小さな影。
「生きてるか」
抑揚のない声音に思わず目を見張ったのを覚えている。
「ど、…どう、して」
「引率」
得物に着いた血を振り払って腰に佩く様は緩慢ではあるが、あの人数を屠ったという事実を突き付けてくる。
「お前が一番死が濃かった」
「…そ、うです、か」
「あそこで動かなかったら放っておこうと思った」
つまり己は最初から最後まで引率されていたにも関わらず、その場面かはわからないがこの人の思う頃合いに運よく動いたので助けられた・という事だろうか。
つまり動かなければ見殺しにされていたという可能性もあったようだ。
「運が、よか、た…?」
「だろうな」
死んでないし、とつばくらさんはざっと己を見て肩に腕を回す。
「…い、たい、です」
「生きてる証しだ。死にたいならほっとくが」
本能的にこれは本気だと悟り素直にすみませんと言えば構わないがと返される。少々重そうに背負い、つばくらさんは足を進めた。
「つばくら、さん」
「なんだ」
「おれ、しにます?」
「死なん」
意を決して口にした言葉はアッサリと驚くほどすっぱり否定された。
「分岐には立ってた。でもお前は生きる方へと間違えずに足を向けた。だから俺は助けた」
俺も昔そうだった、という言葉を耳にした所で意識が途切れ、気付いたら保健室にいた。

「恩人って言えば恩人だろうけど、なんだろうな…物凄く潔い言葉を貰った気がする」
飾り気のない、実直過ぎる言葉にあの時は救われた様な気がした。
「つばくらさんらしいっちゃあらしいな」
「あぁ、だからあの後お礼に向かったんだけど」
「行ったのか?」
「行った。気にするなの一言で終わったけど」
「あー…欲目も無いからなぁ」
執着心の皆無さは驚くけど、あの時感じたのはなんだったんだろうと不思議に思う。自分が死ぬかもしれないという場面で、つばくらさんが屠り続けていたあの空間は…歪だったと言えばそうだろう。普段通りのまま、何の変貌も無くあの人は刃を振るっていた。
「きっと、」
「どうした?兵助」

「死を体現化したらあの人みたいなんだろうな」

ひくりと喉を引き攣らせて三郎は何も言わなかった。突拍子と言えばそうだろう、己の言葉に三郎は少し視線を彷徨わせてそうだなと呟く。
「何ていうか、俺たちと比べて一線越えてる人だし」
「越えてるな、確かに」
年の頃は六年生と同じなのに実力としては教員並みなのだろう、だから学園長はあの人を公認の雑用としたのかもしれない。単なる思いつきかもしれないけど。
「そう言う事があって、俺はあの人を信頼してるんじゃないか?」
「わかんねぇのかよ、自分で」
「そうだな、一歩間違えれば見殺しにされかけてたぐらいだし」
そういう所だ、と締めくくれば三郎は珍しくあさりと引き下がった。一体何が知りたかったんだろうかと首を傾げるも委員会の最中だった事を思い出し、踵を返した。

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鉢屋と久々知の会話。合間見てちょこちょこ小噺書きたいです。ともあれリハビリ的な話…どんな雰囲気だったっけ(ゲフゲフ)そんなわけで変換話書きたいなーと思ってたら殺伐としたでござる。主人公全く絡んでないでござる(回想のみ登場とか!)長編を加筆修正したい。

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