08/15の日記

11:39
忍たま小噺
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走って走って走り抜ける事が今自分にできる精一杯の事だと、血の味が広がる喉と霞みがかりそうな頭で考える。追手が来る。相手にしている暇はない。追いつかれない速度で走り抜けるのは難しいかもしれない。そんな事を考える暇があるなら只管に駆け抜ければいい・と何処かで自分が笑う。ざあ、と駆け抜ける先に追手が武器を煌めかせた、避けようにも方向を合わせて影が動く。
どうする? どうする! どうする!?
ほんの一刹那だったかもしれないそのとても短い時間は、とても長く感じられた。

「…………」

苦無へ無意識に手を伸ばした瞬間、目の前を塞いでいた追手はひとりで勝手にぐず折れる。驚いて思わず足を止めてしまった。途端頭上を木々の枝葉とは違う影が幾つか覆う。考える間もなく思った以上にゆっくりと流れる景色が、途端ぶれ、いつの間にか地面を横殴りに滑っている。視点が一挙に下がり、蹴られたのだろう背中がじんじんと今更になって痛みを主張させて、目に写ったのは、とすり・という音と共に数人の追手と対峙した小さな影。
高めの位置で一つに括られた黒髪が、緩く靡いている。
ひらりと舞うように数人の追手を難なくその人影は屠った。まるで一つの流れの様に、決定事項の様に、追手を残らず屠り去った後も、その前も、なんら変わることのない空気を纏った人がそこに佇んでいた。

「……ッ」

呼ぼうとした名前は突如襲ってきた吐き気と咳き込みによって盛大に噎せかえり霧散してしまう。血の匂いすら忘れさせるような緩慢さと独特の雰囲気で、その人は此方に近付いて来た。

「動けるな?」
「はい」

相変わらずきり丸を彷彿とさせる面持ちだ、と思う(お姉さんなんだから仕方ないんだけど)綺麗というか、中性的な風貌と声音。それでいて腕っ節はもの凄く頼りになる人。

「用意をしておけ、保健委員」

ふっと、力を抜くような、口元が隠れて入るけれどもそんな薄い笑みを浮かべたのだというのが手に取るようにわかった。目元を和らげる素振りは安堵した時に出るもんだってきり丸が言ってたっけ。怖ろしく現実的な思考をしながらも情にあつい所を見せる彼を思い出して何だか苦笑してしまう。この姉弟はぶれること無く真っ直ぐに現実を見据えながらも何処か理想を追っているのだから(これを矛盾というんだろうか?)

「復帰、ですか?」

どのくらいだろう?この人が前線を離れていた時期は。ともあれ掠れた声が出るも気にしては居られない。辺りをうかがうも、それらしい気配はない。だけど、安堵していられる状況でもない。

「そんな所だな、もう一人連れてきたからいいが、」
「…土井先生?」
「違う、は組の司令塔」

それだけ言うとつばくらさんはふっと風に溶けるように消えた。がさりと懐にある書状が音を鳴らして存在を知らしめる。恋文に見せかけた抜け荷の証文は違えることなく己の懐にあるのだ。
送り出したは組の面々はいつも通り笑みを浮かべて…絶対的な窮地であるにも関わらず、悲観的なものに捕らわれてはいない。それだけで終わりじゃないんだと希望が持てた。生きることの難しさを痛感した数年は伊達じゃないと見せつけなければ。
屍を隠すことなく晒したままに消えたつばくらさんはなにを考えているのだろう?と不意に疑問が湧き上がった。とはいえ、今自分に出来るのは、この書面を学園まで持って帰って、みんなの帰りを万全の状態で迎える事。

「…よし、」

かなり休めたと思う。足が重いのは気のせいだ、喉が痛いのも一時的なものだと言い聞かせて再び地を蹴る。速く速く…みんなが揃うのならなんだってやってやる・と白の世界へ飛び込んだ。


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「あしあと」の続き書かないと…!って思いながらもリハビリ兼ねた乱太郎視点に挑戦。なんて銘打ってみるも主人公どんなだっけ?文体どんなだっけ?と探り探りになってしまったぜいひゃっはー!
お盆だけど仕事だし、かといって普段に比べてものっそ暇とかいうのは秘密だ。
相変わらず主人公無双でワタスは満足です(ゲフン)

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