bleach 一護悲恋夢 名前固定
初恋は実らない、なんてよく言ったもんだ
どこかの恋愛少女漫画みたいに恋愛なんてまずない、そんなもの大抵は上手くいかないものだ……たぶん
現に私のこの初めての気持ちも、呆気なく付け落とされている真っ最中だ
『…あ、一護。そういえばこの前借りたCDまだ返してなかったよな』
「ん?あぁ、別にいつでもいいって。どうせ家隣なんだし」
『ははっ、まあな』
「あぁでも遊子がお前に会いたがってたから、今度家来いよ」
『ん……、そうだな、』
……認めたくはないが、私はこの幼なじみの黒崎一護に絶賛片思い中だ
家も隣通しで親同士も仲が良く、更に私自身も一護の妹達と仲が良い
小中高と本当に小さい頃からずっと一緒だった、こいつ、黒崎一護。霊が見える、彼
そんな奴のことを好きだと自覚したのは、中学二年の頃だった。最初はこの感情がなんなのかわからなかったが、月日が経つにつれ次第に意識をし始めて、今に至る、といった感じだ
「あ、そういえば明日空いてるか?紫乃」
『空いてるけど、なんで?』
「明日近くの遊園地で花火大会があるらしいんだ。だから皆で行こうぜって話を今日してたんだよ」
『お、まじか。いいねぇ花火!メンツは?』
「俺とルキアと水色とケーゴ、チャドと石田……、それと井上もいるぜ」
…………ツキンッ
『…いつものメンツだな、いいよ、私も行く』
「おう、じゃあ言っとくわ」
『……うん、』
井上
一護の口から彼女の名前が出る度に、私の心臓は小さく悲鳴を上げる
……だって、私が想いを抱いている彼は、織姫と想い合っているから
付き合っていると発表されたのは、高校一年が終わる頃だった
一番信用しているお前に最初に言いたかった
そう言われて、私の心に初めて黒い感情が生まれた。本当は祝福するべきだと、彼に一番信頼されていたと、喜ぶべきなのに
私はどんどん汚くなっていった
少女漫画じゃあ幼なじみで家が隣だなんて立派な恋愛フラグなのに、現実じゃこれだよ。世の中そんなに甘くないってこった
「…?どうした、紫乃。どっか悪いのかよ?」
『あ、いや、なんでも…なんでもない』
「そうか、ならいいけど」
プルルルルッ
「っと、井上からだ」
『……っ!』
嗚呼、なんてタイミングの悪い
運が悪かったな、私
また黒い感情がじわじわと溢れていく中、一護は 悪い と一言私に言い数歩離れる
そして悲しきかな耳の良い私は、一護の彼女と話す声が聞こえてしまったのだ
織姫、と
私や皆の前では“井上”なのに、彼女とだ話すときは“織姫”らしい
……なんだかなぁ、やっぱり、辛いなぁ
『じ、じゃあ、私帰るわ。また、明日な』
「おお、悪いな」
一護は小声でそう言うと、また織姫と話し始める
それすら私の心臓は反応して悲鳴を上げて、苦しくなる
だから私は少し早足で、なるべく周りの車の音や木々の音に耳を傾けながら、家へと帰った
『……こんな汚い私なんて、いっそ消えてしまいたい』
愛する人の言の葉は私の心を黒くする
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