双子恋愛
□……あれ?
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灰色のユニフォーム。
自分たちの守備位置に散らばっていく、武蔵野野球部。
あの中に、榛名元希はいるのか。オレは目をこらして探した。
本当に元希なら、オレは間違いなく見つけられる自信があった。
榛名元希の姿を、オレは一度も見たことがない。
ピッチャーは、…3年の加具山?最初から榛名じゃないのか?
どこについてんのか…。
「…榛名、ライトじゃん」
てめえ利央。場所言うんじゃねえよ。自分で見つけたかったのに。
人の気も知らない利央は、「榛名が投げないなら、寝る」とか言ってベンチに寝転がってしまった。そのまま死んでしまえ。
とはいえ。
ここからでは距離がある為、顔の確認は少々難しい。
利央は顔は知っているのか、サラッと見つけてしまったけど。
微妙な気分だが、とにかくライトらしい。
期待と不安を胸に、オレは見た。
「例えばさ、和さんが交通事故にあったりしたらさ。オレ出してもらえるかもしんないじゃん」
「おいっ、不吉な事言うなよ…なあ準太」
「…ごめんばあちゃん…今のは神さまに無しって言っておいて…………って、準さん?」
「………え?あ、なに」
「お前どんだけ集中してんだよ、まだ始まってもいないのに」
「あ、ははは…気になっちゃって……」
熱心だな、と和さんは笑った。利央は頭の後ろで腕を組んで、それを枕代わりしてまた寝転がってしまった。
元希
………には見えた。
帽子被ってるけど、そう見えた。
けど、
「……左利き?」
小さい頃の元希は、右利きだった。
……あれ?
(左にかえたのかな)(そんな器用な事は出来ないハズだ)
「……はあー…」
「うわ、すごいため息」
そりゃ出るさ。
どこかに視線を向けた後に見せた本気球。
羨ましく思った。
END.