双子恋愛
□あれから9年
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月日が流れるのは、意外と早いもので。
気がつけばとっくの昔に小学校中学校を卒業して、高校に入学して現在2年生。
体も心も大人になっていく自分。それに伴うかのように過去の記憶も薄れていく。
今、「小学校で遠足に行った時の事、覚える?」なんて聞かれたら、おやつに何を持っていこうか迷っていた事くらいしか思い出せない。
正直、中学の時の記憶も危うい。
それでも、忘れない記憶、思い出はあって。
あの時の『約束』も信じて、過ごしてきた。
もう、9年が経った。
「…はえーなあ……おせーなあ」
昼休み。屋上でグラウンドで遊んでいる生徒たちを見ながら『高瀬 準太』は呟いた。
月日が流れるのが『早い』。
会いに来るのが『遅い』。
怒っているワケじゃない。
ただ、早く会いたいから。
「どこにいるんだろ、元希」
オレの事なんて、もう忘れてる?
会いたくなくなった?
もう他に好きな人が出来た?
オレは、まだ好き。
「どんだけオレは一途な訳……8歳の時の感情、捨てきらないで…」
考えれば考えるほど、会いたいと言う気持ちと、未だ胸に抱いている小さな頃の可愛らしい感情に苛立つという気持ちが交差する。
最近、どういう意味で彼に会いたいのか分からなくなってきた。
どういう意味で、好き?
「……教室戻ろ」
ワガママだった双子の兄、元希。
オレの事、覚えてる…?
あの頃、泣きそうな顔をしていたタレ目の少年。
今では見間違えるほど美しくなり、ここ桐青高校のエースピッチャーだ。
あれから9年
(もう忘れた方がいいの?)(そう言っても、出来ない自分がいるんだ)
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