双子恋愛
□早く早く
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明日の浦和総合との試合を控えている武蔵野第一高校。
ベスト8が決まるという大事な試合。ベストコンディションで臨むのに、今日の部活はいつもより早めに切り上げた。
帰る支度をしていた榛名は、先輩で同じ投手の『加具山 直人』と楽しそうに話していた。
そこに、バラバラと雑誌を捲りながら近づいてきた榛名の同級生『秋丸 恭平』が榛名を呼んだ。
「榛名ー、ちょっと聞いていい?」
「やだっつったら?」
「おい…」
この返事。
加具山は呆れた顔をするが、馴れている秋丸はスルー。話を続ける。
「榛名の探してる『準太』かどうかは分かんないけど」
「はっ?」
「名前、載ってたさ」
「はあっ!?」
開いた雑誌を差し出すとバリッという音と一緒に持っていかれた…というか、取られたという表現の方が正しい。
秋丸が差し出した雑誌はどこにでもあるような野球雑誌。
その中の高校野球のページ。
去年の優勝校―桐青。
「桐青?」
「写真はキャプテンの河合しか載ってないけど、下に……ほら」
指をさす所を見ると『期待の2年エース』なんて言葉の横に確かにあった。
―高瀬準太
「……」
胸が、大きく跳ねた気がした。
準太、準太、準太。
名前しか見てないのに、存在がすぐそこにある気がする。
『ホントに……準太…?』
「準太って、確か榛名の双子の弟だっけ」
加具山が言う。
武蔵野野球部員は皆、榛名が双子の弟を探しているのは知っていた。
その存在が、どれだけ榛名にとって大事なものなのかも。
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