双子恋愛

□ポジティブに!
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大切な人が側にいなくなり、胸なんか大砲で撃たれたみたいな穴が開いた…気分。


とにかくデカい。

とにかく……悲しい。








子供二人用のベッドは、一人では広すぎた。

冷たい布団に一人。
すぐそこにあった温もりがない。


かすかな残り香を感じる度、涙を流した。






「元希」


「……姉ちゃん」




何故か父さんは、オレと姉を引き取った。言わないけど、母さんの方がよかった。


姉はオレが泣く度に、オレを抱き締めて一緒に寝てくれた。
小さかったオレは、それが嬉しかった。





「元希泣きすぎ。立場逆転しちゃってんじゃないの?」


「うるせえ…」


「そんなんじゃ、準太の事守れないでしょ。強い男は、負けた時に泣きなさい」


「なんで」


「また強くなれるからよ。あ〜あ、ねむ……」


「……」





姉ちゃんはたまにいいことを言ってくれる。本心かどうかは分からないけど。

きっと姉ちゃんも離婚は嫌だったろうし、寂しかったと思う。





準太がいなくなって、泣いてる場合じゃない。


やっとそう思えるようになるには半年もかかった。



父さんとの関係は悪くない。
もともと父さんは、いい父親なんだ。遊びに連れて行ってくれたり、話を聞いてくれたり。


ただ、母さんと合わなかっただけなんだ。どこにでもある事だ。

そう考えられるだけ大人になった小学校4年生。離れて2年と少したった頃。













「うっりゃあ!」




この前、底が抜けたランドセルは今姉ちゃんが直してる。
直っても、あの様子ならまた抜ける。


だから今は家にあった適当なカバンを背負って学校に登校してる。



でも今は、ケンカ中。
武器はやっぱりカバンだ。

足狙って叩けばすっころぶ様。
口ばっかりの奴に負ける気はさらさらない。



「さっさと帰った方がいんじゃね?」


「くっそ……」



半ベソかいて睨んで。
負けるなら最初からケンカなんて売ってくるなよな。


ああくそ、もう壊れそうだ。肩に引っ掛けるヒモが取れそうだ。
やっぱりランドセルがいいな。



帰ろうとカバンを右肩に引っ掛ける。
そろそろ姉ちゃんが帰ってくる。飯当番……ああオレか……。




「面倒くせえ」




その言葉は喉まできて消えた。





後ろから伸びてきた手が、オレの右腕を捕らえた。




「ごめんなー」




腹が立つ声色と一緒に、初めて聞いた。







骨が折れる、鈍い音。









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