双子恋愛
□あの時に戻りたい
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「ちょうどいい所に来たなタケっ。傘入れて」
「はあ?ちょ…狭いだろ」
「タケ長いから大丈夫」
ホントいい所に来たな。これで、それなりに体は濡れずにすむな。
雨で風邪引いた、なんて嫌だしな。
出来るだけ引っ付いて、傘の中に入ろうとする。
あんまりくっつくな、って言われたけど…それじゃあオレが濡れるだろ。
「さっき和さんにメール送ったんだ。今日これで試合やるんですかーみたいな」
「この天気なら、多分出来ないな…」
「だよなあ…」
試合は好きだ。
自分の実力が分かるし。知らない相手と試合をして、新たに分かる事があるから。
それに、今年は絶対に負けられない大会だってあるんだ。
余計に気にしてしまう。
「利央の奴早く来いよなー」
「利央と一緒なのか?」
「コンビニで会計してる」
そう話した時、利央がコンビニから出てきた。
…そんなに急がなくていいんだけどな。慌てすぎだろあれは。
利央はコンビニからダッシュで出てきた。そしてオレと同じように、車が赤信号で止まってる時を見て抜けてきた。
それはもう。無駄に早い。
目の前に来て、そっからそこまでの距離ですごい息切れして。
それと何か話したそうに口を開いてる。
「どうしたんだ利央。お前まで傘に入りたいのか?止めてくれ頼むから」
「いっ、あのねっ……あれっ!!」
「あれ?」
利央が指差した方向は、今出て来たばかりのコンビニ。
特に、なんかあったかと聞きたい。
「あいつ…いたんだって!」
「誰だよ?」
雨で視界だって悪いんだ。白いんだよ周りが。
雑誌読んでる人とか、会計してる人とか。従業員の人とか…色々いる。
「誰がいんだよ」
そう言おうと口は開いたが、急に響いた音に気が向いてしまった。
電話だ。
開いてみたら、我が桐青高校自慢の主将の名前が。
「和さんだ」
「はるっ…えっ?」
「とりあえず利央、タオル。ここで立っていても濡れ続けるだけだ」
タケはカバンからタオルを取り出し、利央に渡した。
それと同時に歩きだし、オレは携帯のボタンを押した。
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