しょーと

□未確定の未来
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パチン、パチン



パチン……パチン



私の目の前に座るルシフェルは先程から飽きもせず指を鳴らし続けている。苛々しているのかと思いきや、顔は大変穏やかな表情。イーノックはまだこちらにいるから彼のサポートをしているわけでもなさそうだ。


パチン、パチン


「私の顔に何かついてるのか?」
「……何も。しいてあげるとすれば目と鼻と口ぐらいですかね」
「そうきたか。まぁ、いい」

ククク、と楽しそうに目を細める。もう指を鳴らすのはやめるようだ。

「もうよろしいので?」
「なかなか思う通りにいかないものだな」
「珍しいことを言いますね。貴方の口からそのような言葉がでるとは」


パチン!


一際大きく響き渡る音。目の前にいる彼は変わらずに穏やかな表情で私を見つめている。

「だめだったよ。難しいな」
「何が……」

難しいのですか。そう続くはずだった言葉は口の中で消えてしまった。つい先程まで音を発していた彼の手が、何故か私の頭を撫でているのだ。嬉しいような恥ずかしいような、何だかくすぐったい。

「えらく可愛らしい反応じゃないか」

クスクス笑いながら、とても楽しそうにルシフェルは私の頭を撫でている。恥ずかしいから止めてくれといっても彼は聞かないだろう。

「これからお前とイーノックには辛い選択を強いてしまいそうだよ。だが、迷わないでくれ。お前たちの前に誰が立ち塞がっても自分を信じていけ」
「それはどういう意味ですか?」
「どう解釈してくれても構わないさ。お前の好きなようにとってくれればいい。でもあまり詮索はしないでくれよ。先のことが全てわかってしまったらつまらないだろう?まぁ、まだ確定した未来ではないがね」

彼は笑っていた。相変わらず穏やかな顔だったが、どこか寂しそうに感じられた。私は小さな違和感を胸に抱きながらも追求しなかった。いや、出来なかった、というほうが正しいのかもしれない。

私の頭をひとしきり撫でて満足したのか、彼は行ってくる、と一言残して姿を消してしまった。





このときに何がなんでも聞いておくべきだったと悔やむことになるのはそう遠い未来ではないのかもしれない





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もしルシがラスボスだったら、という妄想





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