創作

□HatRed
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「・・・・神主様から、お聞きに?」

こくりと頷いた。
やはり無雪は隠していた。

「お伝えするのが遅れて申し訳ありません。驚かれるかと思い、今まで・・・・」


「今すぐ堕ろせ!!!」
声を荒げて言った。
言ったというよりは、叫んだかもしれない。

無雪は、目を見開いていた。
かたかたと、肩が震えている。

「無雪は私の使用人よ!子を産むなんて許さない!!!堕ろせ、今すぐに!!!」

欲望、嫉妬、全てが剥き出しになった。

独占したい。

私の世話だけしていればいい。
無雪が自分の子に付きっ切りになるなんて許さない。

「・・何を・・・言って・・・」

無雪の顔は青ざめていた。
怒りと悲しみが混合し、形容し難い表情になっていた。

「堕ろさないなら・・・・今すぐ私がお前の腹から子を引きずり出してやる!!!」


傍にある、銀色の鋏を掴む。



「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」




肉片が飛び散る。
障子に鮮血が張り付く。

腹の中には、胎児がいた。

普通の赤子より、一回り小さい。



なんて、私は惨いことを。


大粒の涙が溢れた。

私って、なんて自分勝手で浅ましいのだろう。



「ひっ・・・うぅぅ・・・・」



無雪。

無雪・・・。






なしゆき。




「なんて残酷なことをする娘だ!」

裁判にかけられたとき、無雪の夫に罵声を浴びせられた。

「信じられない!!!いくら巫女様といえど、所詮ただの娘じゃないか!何故殺したのだ!!何故だあああああっ!!!!!」

泣き喚く男。
悲しそうに目を伏せた観衆は、男を制した。

注がれる、冷たい視線。



「・・・・すまないな」
最後に、神主が言った。
「お前を助けてやれなかった。構ってやれなくてすまなかったなぁ・・・。お前の母との約束も守れずに・・・」

母との約束?

ねえ、それって何?


ねえ・・・もしかして貴方は・・・・。


問うことはできなかった。
私は地下牢まで連れて行かれ、顔の痣は包帯で覆われた。
体には鎖。

「十日後の処刑まで、ここにいろ」


ガシャン。
鍵が、かかる。
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