創作

□HatRed
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「ひ・・・っ・・・うう・・・」


涙で包帯がずれ、微かに外が見えた。
色褪せた土壁に、牢。




幾度目の夜だろう。

どうせ処刑されるのだから、時間などもうどうでもいいが・・・。





「助けてあげようか」



凛とした声がした。
人の気配。
真っ白な髪に、真っ白な服。
体中に、血がこびりついていた。

この少女は・・・誰・・・?



「そのかわりキミ自身を無くすことになる。進行が進めば取り返しがつかない」


何を言ってるの?
貴方は誰なの。


「まあ・・・もう戻ることはできないけど」


「・・・・え?」


久しぶりに声を出した。
小さく、か細い声。


「キミを苦しめた奴等・・・・全員、消したから」


光がさした。



気味の悪いほどの静寂。
私には、心地いい静けさ。



あの時、私はメッチェンに出会った。

罪を受け入れてくれた。
例え自分自身を失っても、それでいい。価値などない。
貴方がいればそれでいい。


空に桜の花弁が舞い上がった。
春だ。

「メッチェン・・・ひとつ聞いてもいい?」
「ああ」
「メッチェンって初めて会ったときから全然変わらないわね」

1年して、私の髪は肩の上の長さから、肩より下まで伸びた。
でも、メッチェンは変わらない。
髪の長さも、体も、表情も。


「ねえ、ム」

「・・・何・・・?」
「俺はいつ許されるのかな?」

メッチェンが言う。
意味は、分からなかった。


「一体いつまでキミを愛せばいいんだろうね」

悲しそうに笑う。

いつも口にする、その言葉。
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