創作
□HatRed
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ーーー序。
ビルの屋上に、巫女姿の少女が佇んでいた。
隣には、フードを被った二人の少年が立っている。
「りーんじーんと、かーじんがー・・・」
少女が歌う。
一定の音程で、滑稽な歌だ。
「きでんをせっすともうします・・・」
風が吹く。
季節は春目前といっても風はまだ冬の過酷な冷たさを残していた。
「ねんねころころねんころよ」
歌い終わると、巫女姿の少女は長く赤い髪を振り乱し、フェンスに攀じ登った。
「・・・どうしたんだ、ム」
少女はムという名前らしかった。
フードを被った二人のうち、金髪の少年がそう問い掛ける。
「・・・・隣に・・・・」
「なんだ?」
「あの子の隣に、誰かいるの」
そう呟く少女の顔に、先ほどの穏やかな笑みは無かった。
目は虚ろで怒りに満ち、口からは唾液が垂れていた。
少女の赤い髪に結ばれた、黒い髪飾りが揺れる。
「他の女の匂いがするのっっ!!!」
少女は、フェンスから飛び降り、下へ下へと落ちていく。
目指す地は、荒野に聳え立つ古びた館。