創作
□HatRed
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いつか、メッチェンが言っていた。
この館の名前を。
――時限館、と。
case5音の無い声
「すごいね。キミの憎しみは現実になるんだ」
繰り返し、頭の中でメッチェンの言葉が反響する。
私の憎しみは、現実になる。
はっきりとした意味は分からないが、あの巫女の少女の一件で・・・私は普通ではないことを知った。
私は、あのムという少女に向かって「死んで」と言った。
その瞬間、彼女は血まみれになって死んでいた。
私はそこから覚えていない。
その後、目が覚めてから何日か過ごしていたような気がする。
記憶が曖昧だ。
私は今日までこの館で何日過ごしたのかすら分からない。
3日、いや一週間?もしかして1ヶ月?
その日々の中で、私はメッチェンの生い立ちを聞いた。
ある大雨の日、メッチェンはぽつりぽつりと語りだしたのだ。
悲しい、話だった。
自分の嫉妬心に勝てず、兄を殺害したのだと。
兄が、自分の誕生日を祝おうとしていたことも知らずに。
いつもの淡々としたメッチェンだった。
そう思っていた。
私も昔のメッチェン同様、分かっていないことがあったのだ。