シュバルツ短編

□lustig
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「それで、…なんだ」

帰ってきた奏と内海を迎えたケヴァンは、一応声をかけてやる。
すると2人は待ってましたと言わぬばかりに顔を輝かせ、一気に捲くし立ててきた。

「あのね、あのね!凄いんだよ、ケヴァン!!」
「そうなんだよー!!楽しかったんだぜ、秋葉原!!」

そう、2人は新作のフィギアを買うために秋葉原まで繰り出していたのだ。




ケヴァンはもちろん反対した。
何たって奏は狙われる身だ。

ただでさえ人が多く、危険な場所に行くなんて持っての外だ。


だが2人はどうしても行きたかったらしく、かなり食い下がってきた。

内海はお得意(?)の話術で。
奏は必死に訴えかけて。

それにはさすがのケヴァンもかなり押され、危ないところまで来た。
だがやっぱり駄目だと、首を振った。

…奏を危険な目に合わせられない。
それがケヴァンの本意だったから。


その思いが伝わったのだろう。
奏はしょんぼりしながらも、それでも『わかった』と言って微笑んだ。

その姿は、とても同情を引くものだったけど。
それでもここは奏のため、とケヴァンは頑なに首を縦に振ることはしなかった。

だが。

「なら神楽崎も行けばいいじゃん」

ポツリ、と内海が呟いた。

それにケヴァンはビシリと固まり、奏は希望に顔を輝かせた。

確かに、ケヴァンがついて行けば危険は少なくなるだろう。
だが、それは。

あのマニアックな会話の渦中に巻き込まれるということで…。
普段からでも堪えられないのに、それを悪化させるような場所に言ったらどれほどになるのか…。

予想の範疇を超えるような気がしてならない。


ケヴァンは冷や汗が流れるのを感じた。

行きたくない…。
絶対行きたくない…っ!


でも目の前には。

キラキラと目を輝かせる奏の姿。
期待している。
凄くしている。

幻覚の様に犬耳やらパタパタ揺れている尻尾まで見えてくる。

『行こうよ、行こうよ』
目が、雰囲気が、(幻覚の)犬耳&尻尾が。
訴えかけてくる。


ケヴァンは迷った。

マニアックな会話か、目の前の奏か…。
ある意味、超騎士を相手するより困った。



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