シュバルツ短編

□lustig
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そして戻って現在。


秋葉原から帰ってきて興奮気味の2人は、ケヴァン相手に好き勝手に喋り捲っていた。

「あのね、フィギアも凄かったんだけど、メイド喫茶も凄かったんだよ!」
「そうそう!あそこのメイド服はレベル高かったなー!種類もいろいろあったし!」
「うんうん。ロングスカートからミニまで!しかも結構凝ってたよね」
「おう!アレは次の改造の際に絶対使ってやるぜ!」
「すげー!内海、男前!!オレのもよろしく!」
「任せろ!」


ケヴァン相手に話しているはずなのだが、その肝心のケヴァンは取り残され気味。
というかついていけてない。

なのでケヴァンは適当に流しつつ、2人の興奮が醒めるのを待った。


でも2人はそんなケヴァンは放ってどんどん話を広げていく。


「そう言えば妹喫茶ってのにも行ったんだよね」
「そうそう!アレも可愛かったよなー、妹系!『お兄ちゃん』って言ってさ」
「そうだね。オレ妹居ないから、ちょっと嬉しかったかも!それに可愛いし」
「だな!あれも頂きだ!」
「後は…ツンデレ喫茶ってのも回ったよね」
「おう。アレは最初びっくりしたなー。いきなりあの対応だし」
「ん〜、確かに。でもすぐ慣れたよ?」
「おまえのそういうとこ、すげーと思うよ」
「そう?」


ツンデレ?妹?
何だ、それは。

ケヴァンはわからず首を傾げる。

でもまぁ、そんなことはどうでもいい。
わからないし。

むしろケヴァンが気になっていたのは。


「おまえたち、一体どんな変装をしていったんだ?」

出る前に聞きそびれたそれ。
内海は『任せろ』といっていたが、どうも信用ならない。

だから、改めて問い掛けた。


が。

ケヴァンが言った途端、奏がビシリと固まった。
そして内海は『待ってましたー』と言わぬばかりにガッツポーズ。

一体なんだ?
ケヴァンは益々訳がわからなくなった。


だがそんなケヴァンを放って、内海は楽しげに奏に話しかける。

「どうやらー、神楽崎君は俺の腕が信用ならないらしい。なので!是非見せてやろうではないか、俺の真骨頂!行くぞ、嘉手納!!」

それと共に、奏が一瞬にして復活した。

「絶対やだ!!アレを見られたくなくてわざわざ帰ってくる前に脱いだのに!!!」
「仕方ないだろー?神楽崎が言うんだから」
「ケヴァンをダシにしないでよ!!」

奏は抵抗しようと必死に言い返すが、内海は問答無用で奏を引き摺っていく。

「さーて、華麗に変身しましょうか。か・で・な?」
「絶対やだー!!!!」

ズルズル引き摺られていく奏を憐れに思いつつ、それでもやっぱり2人の変装が気になる。
なので黙って奏が引き摺られていくのを見守った。







そして、数分後…。


扉が開いた。




その先に居たのは。



「ほら、見せなきゃ意味ないだろー?」
「やだー…」


一瞬誰かと見紛うほどの、内海と。
その後ろに恥ずかしそうに隠れている、多分奏と思われている姿。

「はいはい。さっさと出る!」
「わ!」

そんな奏を、内海は非情にも前に押し出した。


ケヴァンの目に見えたのは。
まるで少女にしか見えない…奏の姿。


膝丈より少し短い、白いワンピース。
その上に羽織った、ピンクの可愛らしいカーディガン。
そして黒いニーソックス。
さらには背中ほどまでのウィッグをつけて、それを耳の横で2つに結わえている。



本当に、女の子にしか見えない。

というより、女の子。

もともとの童顔に、内海による完璧とも思われる技術によって完全に少女としか思えないほどになっていた。

これは、さすがのケヴァンも内海の技術を認めなければならない。
いや、これは予想以上だ。

「凄いな」

故に素直に感嘆の意を示した。


「だろだろ〜♪これにはかなり自信があったんだ!」

「え〜…、やっぱり変だよ…」

1人奏だけが、変装に否定的な声をあげている。
それはそうだろう。
奏は男なのだから。

でも。
実際似合っている。


それはケヴァンも内海も認めるところだ。

2対1。
奏の負けだ。

「うー。ケヴァンも内海も酷いよ」

奏は小さく呻いた。




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