シュバルツ短編

□Liebeskummer
3ページ/3ページ



一方、奏のほうと言えば。


「えっと…、えーっと…」

トイレだと言って部屋を出たのはいいものの、奏はドアの前にしゃがみこんでいた。

何となく、動けなかった。


どうして、あんなことを言ってしまったのか…。
どうして逃げるように部屋を飛び出してしまったのか…。

奏自身にもわからなかった。


「どうしてだろ…」

奏は悩む。

聞いたのは自分なのに。
ケヴァンなら、経験していて当たり前だと思っていたのに。

なのに。

いざ聞いた途端、どうしようもなく戸惑った。

胸がざわざわする。
体がそわそわして、落ち着いていられなくなる。

どうしたらいいのかわからない。

焦る気持ちで考えても、何もいいことなど思い浮かばなかった。



「どうして?」

奏はぎゅっと胸を掴んだ。


キスしたのは誰?
どんな人?
綺麗な人?
好きな…人?

溢れる疑問と同時に、何とも言えない感情が溢れ出る。

わからない。
どうして?

奏は困ったように俯いた。


知らない感情。
自分でもわからない感情。

ただ戸惑いだけがそこにある。


「ケヴァン…」

奏は思わずケヴァンを呼んだ。






まだ知らない

まだわからない



でも、それは



俗に言う、




『嫉妬』




なわけで




そして、誤解をときたいと思うのは


『好き』


だからこそ、なんじゃない?







でもまだ



今は


恋未満





end.




Liebeskummer
『恋わずらい』




前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ