短編

□さよなら、my friend
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あぁ、俺たちはまた『さよなら』も言えず、別れていくのか。





さよなら、My friend





甦るのは、幸せだったあの頃の記憶。




「ルルーシュ!もう夕方だから帰らないと…」

今まで一緒に遊んでいたスザクが、夕方の空を見て少し残念そうに呟いた。

その言葉につられて、ルルーシュも空を見る。
遊びはじめた時は、綺麗な青空だったのに、今は真っ赤に彩られている。

時間が過ぎるのが早い、とルルーシュは思う。
スザクと一緒にいるときは特にそうだ。


もっと一緒にいたいのに。

でも時間は無常にも過ぎて、スザクと別れる時がくる。

ルルーシュは小さく俯いた。

そんなルルーシュを心配したのか、スザクが「ルルーシュ…」と小さな声で名前を呼んだ。

でも、ルルーシュは顔をあげない。
夕日なんて見たくない。
そんな子供の小さな抵抗だった。


でも、時間はそんな子供の小さな抵抗など待ってはくれない。

真っ赤な空はだんだん紫へと変わり、夜が近いことを告げている。


帰らなければいけないとは、わかっている。


でもスザクと別れるのは嫌だった。




「ルルーシュ」
少したって、スザクが再びルルーシュの名前を呼ぶ。

その声はどこか明るいもので、ルルーシュは気になって顔をあげた。

目の前に広がったのは、にっこり笑ったスザク。

ルルーシュにはスザクがどうしてそんな顔をしているのかわからなかった。

挙げ句、スザクは自分と別れても淋しくないのだろうか、なんて最悪の考えも頭に過る。



ルルーシュは不安で仕方なかった。

でも、スザクはそんなこと考えてなかった。

スザクはにっこり笑ってルルーシュに向かってこう言った。
「ルルーシュ、あのね。また明日も会えるおまじないの言葉を知ってる?」

ルルーシュは「おまじない?」と、スザクのいった、おまじないの言葉を繰り返す。

スザクは「うん」と力強く頷き、言葉を続ける。

「『さよなら』はね、別れの挨拶だけど、『また会おうね』って意味もあるんだって。だから、『さよなら』って言ったら、『また会おうね』なの。
だからきっとちゃんと『さよなら』したら、また明日も遊べるよ!
だっていつもちゃんと『さよなら』していつも一緒に遊んでるもんね」

そう、最後まで言って嬉しそうに笑う。

その笑顔は本当に嬉しそうで、ルルーシュに希望を与えるのには十分だった。

「ちゃんと『さよなら』したら、また会える?」
ルルーシュは確かめるように問い掛ける。

「うん」
それに対し、スザクは力強く頷く。

ルルーシュの表情は、だんだん明るいものに変わっていく。
そして、

「ホント?」
「ホント!」

二人はクスクス微笑みながら、確かめあうように頷き合った。


「じゃあ『さよなら』しようね!」
スザクはルルーシュに言った。

「うん。『さよなら』しよう!」
ルルーシュもスザクに向かって言った。


そして、二人揃って

「『さよなら!』」

と挨拶した。


また明日も会えると、願いを込めて。





そして約束通り、二人は明日も一緒に遊ぶこととなる。


それから、二人は別れるとき、必ず『さよなら』を言った。

また明日も会える。
そう願いを込めて。





幸せだった記憶。
『さよなら』を言えたあの頃。


でもあの日は言えなかった。

だから俺たちは離れ離れになってしまった?

『明日』も会えなかった?




『さよなら』を言えなかったから。




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