短編
□トト
1ページ/5ページ
皆は知らないんだね。
あの手がとても優しいこと。
『トト』
「痛いっ!」
スザクは思わず手を引っ込める。
「またやられたのか?」
そんなスザクを見て、ルルーシュは心配げにスザクを見た。
スザクの手には、痛々しい爪痕。
しかも血まで出ている。
ルルーシュは小さく息を吐き、スザクの怪我をしていないほうの手を引き、水場へと急いだ。
スザクはその後から、しょんぼり肩を落としながら着いてくる。
よっぽど残念だったらしい。
ルルーシュは再び溜息をついた。
スザクは猫が好きだ。
よく猫を見かけて触りたそうにしている。
でも、いざ触ってみれば今さっきの様に引っ掻かれる。
そして毎度毎度スザクはがっくりと肩を落とすのだ。
そんなスザクを見てルルーシュは思う。
何故あそこまで猫に嫌われるのか…。
一匹ぐらい、触らせてくれる猫がいてもいいだろうに。
いつも、そう思う。
でも現実は、猫は逃げるし、スザクは引っ掻かれるしの繰り返し。
スザクが猫に触れる日が来るのはいつのことやら。
ルルーシュは再度溜息をついて肩を落とした。
皆は知らないんだね。
その雰囲気も、その手も。
とてもとても優しいものだって。