古びた大学ノート

□INDIGO BLUE
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《第1章 藍色の夜明け》

この世界には、魔法がある。
空があって大地がある。海があって命がある。
オレたちは、この世界に生かされている。光を受け生きている。

そして…

足下には影が生まれる。

人が集まれば争いが起き、王が生まれれば身分の差が生まれるように…自然なことだ。

「奴」は、世界が生み出した闇…悪、絶望、虚無、そんなもののひとつだ。「災い」が具現化した命。
突如として現れては人に不幸を落としていく異形の怪物、アトラビリス。
オレたちの世界は、この強力かつ凶悪なモンスターにおびやかされていた。

どんな勇者も魔導師もサジを投げた怪物を、ある日、消し去った者たちがいた。

なんと、10歳少々の子どもたちだった。

しかし、なぜ倒せたのか、どう倒したのか、何も語られることはなかった。人々はただ、世界に平和をもたらした5人の子どもたちを、「影に勝ちし子どもたち」…ウイニングチルドレンと呼んだ。
しかし、5人のなかの1人たりとも、「私こそが勇者だ」と世間に躍り出る者はおらず、ウイニングチルドレンの存在は、もはや、過去の都市伝説のようになっていた。

あれから5年の月日が経った。

オレの名は、ブッシュ=ウイズダム。
学校のみんなにはウイズと呼ばれている。国立歴史専科学校に通う、自称苦学生だ。

オレは、あのウイニングチルドレンと同い年。オレは彼らにあこがれて、ひたすらその影を追ってきた。
武術や魔法を学んで、魔たちやこの世界のルーツや近代史を勉強して。「強さ」という、漠然とした高みを目指してきた。

いつかオレも、人々を守り救う勇者になるんだ。
でも、もうオレたちは17歳…チルドレンがチルドレンじゃなくなる前に、何かを掴みたかった。


そう、何かを…。
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