古びた大学ノート

□LA外伝
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《序章の序章》
俺はこの世界が、大嫌いだった。

首輪をつけられたみたいな窮屈さ。
俺を持ち物扱いしたり、動物みたいに躾けようとする親。
身勝手な大人たち。
まとわりついてくる、鬱陶しい奴ら。
そん中で、解決策も見当たらず、拳を振り回して拒むしか出来ない俺。
みんな大嫌いだった。

「よぅ、今日は来てんのか。珍しいな。」
夜の商店街。
くそったれた「仲間」が俺に手を振る。
たわむれるヤン茶坊主達。居場所のない中坊や、在日の渡来児。
そして、俺たちに相対する、シマ荒らしの「敵」…。
シャレんならないレベルのマフィアの真似事をしながら、毎日を過ごす。俺は、たまにここに顔を出す。

ツルむのは嫌いだ。
俺はただ、「敵」を、心置きなくぶちのめしたいだけ。ここなら、堂々とそれができるから。

「もうガキぁお寝むの時間だぜ!覚悟しやがれっ!」
敵の一人が懐からチャカを取り出す。
俺と目が合う。
チャカより先に、俺の苛立ちに火がついた。
「がっ…!?」
その一人が倒れる。
続いて、周りの連中も。1、2、3…8人目。
鎮圧。
「…ふん」
少しは、胸がすっとした。「仲間」が苦笑いしている。
「さすがだな。目が合った瞬間にノックアウト…邪眼の名はダテじゃねぇや。」
俺はとくにリアクションを返さず、帰途についた。

目障りだから、大嫌いだから、殴り倒す。
いつまで続くか分からないけれど、それが俺と世界の付き合い方だ。

「きゃああっ!助けて!!」
「…?」
ふと通り過ぎようとした公園から、甲高い悲鳴が聞こえた。不快なほど大きく、強く。俺は反射的に公園に入った。
「もう逃げられないぜぇ…」
変質者だ。
ナイフを持った変質者が、幼い女の子を襲おうとしている。
「…たく」
俺は飛び掛かり、変質者を5秒でのした。
正義の味方?
違う。
俺を不快にする腐った大人を…変質者を沈黙させたかっただけ。
だけど…
「そこの腰抜け。漏らしてないか?怪我はないか?」
「あ…うん…ありがとう…」
涙を拭いてお礼を言う少女が…
ちょっとだけ、嫌いになれなかった。
「どうした?早く帰れよ。」
「…。」
ははぁ。
帰れない事情があるのか。
こいつも俺と同じ…腐った大人の被害者だ。
「誰かいるのか!?」
「…!」
やばい。
警察が嗅ぎ付けて来ちまった。俺は見つかっちゃいけない。
俺は、その子を置いて暗闇へ逃げ帰った。
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