古びた大学ノート

□INDIGO BLUE-続-
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「はいよっと・・・」
先生がドアを開け・・・
「・・・。」
がちゃり。ご丁寧に鍵まで閉めてしまう。
「あっこらゼラてめぇ!あけろ!」
「ったく・・・いまさら、何の用だか・・・」
がちゃり。その客は、強引に家に入ってきた。
「おっじゃま〜す。へへ、久しぶりだな、ゼラよお。」
それは中年ちょい手前くらいの男だった。大柄で、筋骨のしっかりした体格は、戦士を思わせる。髪は、世俗離れしたブルーの長髪。先生をファーストネームのゼラと呼ぶので、先生の旧い知り合いであることが伺えた。
「あれ?師匠?」
「よ、ファル坊。元気そうでなにより。」
師匠?
ファルは、この男と面識もとい、師弟関係?があるようだ。

私たちは、その客と朝食をともにした。
「オレは、カリオスってんだ。旅の剣士で、ゼラとは昔同僚だった。んで、つい最近ふらりとこの街に戻ってきて、偶然出会ったこの若造に魔法や剣術を教えたりしたわけ。」
たしか、先生は昔傭兵をしていたと聞いている。ということは、のんきに食後のコーヒーをすすっているこの男もやはり戦士だったのだろう。
しかし私には、それよりも気になることがあって。
「ファル、朝練に付き合え。」
「おう、いいぜ?」
とっとと朝食を済ませて席を立つ私を、ファルがあわてて追いかけた。


「で・・・何の用なんだ?」
―・・・オレは、この突然の訪問者を睨みつけた。
「はは、引退してシングルマザーしてるっつうゼラと、その養子の様子が見たかったんだよ。怖い顔すんな。オレ、そんなお前が母ちゃんだったらびびって泣いて家出してるぜ?」
カリオスは、のんきに笑う。
「あのな・・・」
「それとな、この家にアイツの形見があるだろ。それ、ちょっと手入れしとけ。いずれ必要になる。」
「は?どういう・・・」
「理由?お前と同じさ。ガキを幸せにしてやりたい・・・ってね」
「カリオス・・・」
「あいつは、あいつらは・・・平和に心身を鈍らせて生きられる部類の者じゃない。目標がないと、年齢に関係なくボケちまうもんだぜ?」
彼は不敵に笑い、首にかけていたペンダントをテーブルに置いて、
「じゃ、ちょっと行ってくるよ。」
ふらりと、家を出て行った。
「ったく。ストイックなのはいいが、ガキにまでそれを要求するとはなぁ・・・」
オレはため息をついて、彼を見送るでもなく倉庫に向かった。

“形見”を引っ張り出すために。
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