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□アイシテルなんて、嘘
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「前世の君は、落ちこぼれと呼ばれていました。」
「へぇ」

抑揚のない低い声が、響くことなく静かに部屋に溶けていく。それは返事をしているというよりも、むしろ独り言に近かった。

「平和な日本という国で、平凡な家庭に生まれ、ごくごく普通の少年として生きていました。」
「ふぅん。」

話しを聞いているのかいないのか、曖昧な返事を返しながら服の袖をまくり腕に着けた腕時計を見る。

「そんな彼の正体は、イタリアの巨大マフィア『ボンゴレファミリー』の10代目候補でした。彼はたくさんの困難を乗り越え、見事に10代目ボスとしてファミリーを守り続けました。」
「ねぇ、骸。俺が聞きたいのはそんなことじゃないってわかってるんだろ?俺だって忙しいんだからさ、さっさと話してくんない?」

革ばりのソファにどっかりと腰を下ろした青年は不機嫌さを隠そうともせず、思いっきり眉を寄せた。骸と呼ばれた男は『クフフ』と独特な笑いを零す。

「せっかちな人ですね。前の君はもう少しゆとりのある人物でしたよ?」

『10代目になってからは。』と心の中で付け足す。

「あなたが知りたいのは、前世での自分の最期・・・でしたね?」
「そう。早く教えて。」

そんなことを知ってどうするのだろう?と、目線を少しだけずらす。
この傲慢が服着て歩いているような奴が、あの沢田綱吉『だった』男だなんて。今のこの男には、あの頃の優しさや甘さなど微塵も残ってはいなかった。

「そんなことを知ってどうするつもりだ、とでも言いたげな顔だね。そんなこと、お前が知る必要はないんだ。」

男はソファから立ち上がり、その長い指で自分の目の前に立つ骸の顎を掴み上を向かせた。無感情に自分を見上げる骸にクスリと笑みを零す。

「お前は前世で俺に誓った。何があっても側にいる、俺に自分の持つ全てを捧げると。」
「・・・・・・」
「その誓いは、俺が生まれ変わった今も続いている。なぜなら俺は『綱吉』だからね。なぁ骸?お前が俺を見つけ出したんだ。」

(前世のことなんて微塵も覚えていないくせに、僕が約束の話しをしたとたん綱吉君の生まれ変わりを強調してくるなんて。本当に同じ魂なのか疑わしいですね。でも・・・)

それでも、この男が『沢田綱吉』の生まれ変わりだという事実を変えることはできない。
例え性格が360度違っていたとしても、この男が綱吉の魂を持つ限り、あの誓いは続行される。

「アイシテルよ骸。だから、ねぇ。俺の望みを叶えて?俺のためだけに生きて?」
「・・・わかっています。貴方が貴方である限り、ね・・・。」



終わることのない輪廻の中で、廻り続けるその魂を愛し続けましょう。





END

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