深緑の国
□貴方の力になりたくて
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「ゴドーさん!」
裁判所から難しい顔で出てきたまるほどうは、階段下で手を挙げるオレを見た瞬間、ぱっと顔を輝かせてすっ飛んで来た。
「お疲れだったな、コネコちゃん。その顔じゃあどうやら‥‥判決は明日に持ち越しか」
「ええ、思いも寄らない証人が出てきちゃって」
苦笑いを浮かべて肩を竦めるコネコの頭をぽんぽんと撫でてやる。
「ま、アンタなら大丈夫さ…明日には決着がつくんじゃねぇか?」
「あはは、そうだと良いんですけど。そうだ、現場、これからゴドーさんも一緒に行きませんか?」
「クッ‥‥そうしてぇのは山々だが、オレは星影のジイサンの所に戻らなきゃならねえ。今はおつかいの帰りなのさ」
脇に抱えた資料を軽く振ってみせると、まるほどうは眉を下げてあからさまにがっかりした。
「元気出せ、まるほどう。オレの意見が聞きてえなら、後でアンタの事務所に行ってやるよ‥‥手作りの夕飯付きで、な」
「うおっ、ほんとですか?」
「オレが嘘吐いた事なんてあったかい?」
にやりと笑うと、ないです、ととろけたような笑みを浮かべる。
本当に、なんて愛しい。
「さて、じゃあ調査頑張れよ」
「ゴドーさんは、無理しないでくださいね!」
「ハイハイ、アンタもな。8時頃に行くから、その時間には戻っておけよ」
「了解です!それじゃ!」
元気に宣言して調査資料一式入ったデカい鞄を抱え直し、まるほどうは走っていった。
その後ろ姿を見送り、オレも歩き出す。
星影のジイサンには悪いが、今日はこの資料を届けたら上がらせてもらおう。
真実に向かって走り続ける、愛しいヤツの力になるために。
fin.
2011.03.17.