深緑の国
□Surrender
1ページ/1ページ
ふと、目が覚めた。
微かに感じる光の加減で、まだ明け切らぬ朝であることを認識する。
夢を、見た気がした。
既に残り少ない夢の残滓からも、体中にまとわりついている気持ちの悪い汗からも、それが良い夢では無かったことが判る。
「今更何を夢見たんだか」
悪夢なんて、もう見飽きるほど見た筈なのに。
5年も続いた眠りの内に、一生分の悪夢を見たと思っていたのに。
「なるほどう」
傍らにいない恋人を想う。
仕方がないのだ、彼は第一線で活躍する弁護士なのだから。
師匠の先輩という立場からすれば…彼が仕事で多忙であることは喜ぶべきこと。
けれど。
「クッ…恋人に一ヶ月も会えねえで平気なオトコなんざ…いねえ、ぜ」
恋人という立場としては、辛い。
異常なくらいに依存している、その自覚はあったけれど。
電話では足りない。
メールではもっと足りない。
「会いたい」
「愛しい」
彼が足りない。
きっと、足りないから悪夢を見る。
いつの間にか
心も体も、彼に屈服していて。
甘やかに、降伏を叫んでいる。
Sweet Surrender is
all that I have to give.