深緑の国
□優しい人
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私には、大好きな人がいっぱいいる。
お姉ちゃん、はみちゃん、御剣検事、ヤッパリさん、神乃木さん……みーんな大好き。
そして、なるほどくん。
いつも微笑んで私のことを見守ってくれてる、優しいなるほどくんが、私は一番好き。
大好きって思うし、いつも一緒に居たいって思う。
なるほどくんも、私のことが大事だよって言ってくれる。
けど、それは、私がなるほどくんに対して抱いてる感情とはなんだか違う気がする。
「真宵ちゃん?どうかしたの?」
どんなに忙しく仕事をしていても、私がボンヤリしていると直ぐに気付いて声をかけてくれる。
「あはは、ちょっとお腹すいたなー、て思って」
なるほどくんのことを考えてたんだよ、なんて言えないから。
「真宵ちゃん…さっき大盛り味噌ラーメン、食べたじゃないか」
そんな笑顔が好き。
必死に依頼人を守ろうと戦ってるときの顔も大好き。
「えー、もう2時間も前だよ。おやつ食べよ!おやつ!」
大好きなの………。
「って……ま、真宵ちゃん?泣いてるの?やっぱり何かあったんじゃないか?」
気づかぬままに、私の目は涙を浮かべてた。
あー、もう。こんなんじゃ、ダメなのに。
「何でもないよー」
はぐらかして笑うけど、真剣な顔になったなるほどくんは机を離れて私の隣に座った。
「真宵ちゃん、ツラいことがあったの?」
ううん、違うよ、違うよ。
「あのね……優しくするのって、難しいんだね。優しすぎると人を傷つけてしまうんだって、昔、本で読んだの。まさかって、思ってたんだけど。優しいってさ…すごく、ツラいこともあるね」
なるほどくんが、優しすぎるから……
私は泣いちゃうんだよ。
「そうだね…難しいよね」
呟くようになるほどくんは言って、私の頭を撫でてくれる。大きな手は温かくて、また涙が出てくる。
「…なるほどくん、ごめんね、ありがとう。もう大丈夫だから!」
暫くこのままで居たいけど、ずっと甘えてるなんてできない。
もうすぐ、神乃木さんが来る時間だから。
平気な顔してなきゃ、神乃木さんにまで心配かけちゃう。
「僕は話を聞く事くらいしかできないけど…僕はいつも、真宵ちゃんの味方だよ。傍にいるから」
ね?と笑ってみせるなるほどくんに、頷いて私も微笑んでみせる。
ありがとう、なるほどくん。
やっぱり優しいなあ。
…ツラくなるくらい。
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「今日、真宵ちゃんが泣いてたんです」
居心地の良いソファに座ってゴドーさんと2人凭れあう、夜のひととき。
「優し過ぎると人を傷つけてしまうって。…詳しくは話してくれなかったんですけど。何かあったのかな」
ゴドーさんの胸に頭を預け、考え込む。
しばらく沈黙していた彼は、ややあって僕の頭に手を置いた。
「おじょうちゃんも、アンタも…優しいからな。その分悩みも深くなる。相手のことを第一に考えるが故にってヤツなんだろうが」
ふぅ、と息を吐き出して、くしゃりと僕の髪をかき混ぜて。
「おじょうちゃんには…申し訳ねえなァ」
ぽそりと、心底申し訳なさそうに呟いた。
彼が言う意味はよく解らなかったが、とにかく彼女のことをこれからも見守っていこうと、僕は心密かに決意した。
妹みたいに愛しい、
僕の大切な友達を。
fin.