深緑の国

□闇夜
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「ぁ…ゃっ…ぁんっ」

ひっきりなしに自分の声が部屋に響く。
歯を噛みしめれば少しはマシだろうと思うが、それでも口を開けたままなのは、自分を抱きすくめるようにして深く繋がる男が、この声を好んでいるから。
求めているから。

「ゴドぉ、さ、っぁん」

名を呼べば、白濁した双眸が上がる。
ほとんど見えていないそれは、でも、普段の行為中ならば僕を鋭く射ぬくけれど、今のような時にはおぼつかなく揺れる。
僕は焦れて、ぐ、と自分から接合を深めるように体を動かし、唇を強引に重ねた。

「は…ふ…ゥ」

まだ足りない、と縋るのは、彼。
彼が仮初めであれ充足感に浸されるまで、僕は彼が求めるままに体を開き、時に彼が躊躇すれば無理矢理にでも引き寄せ、かき抱く。

愛しい人。
愛してるから。
だから僕に―――


「龍一…!」

「あ、あああっ!」

体の真ん中、悦楽の奥深く、繋がりの果てに、誰よりも愛しい人の熱い飛沫が、吐き出された。



「はぅ…ぅぅん」

ず、と彼の一部が自分の中から出る、その刺激からすら僕は快楽を拾い上げて、呻く。

繋がりが解かれても、お互い言葉らしい言葉を発することは無く。
通常なら当たり前のように行う、拭ったり掻き出したりという事後処理すらも、すること無く。
そのままに、ただ倒れ込むように、また強く抱き合って目を閉じる。


無粋な時計が頭上で現実に戻れと叫べば、彼よりも早く目を開けて、僕から口づけた。

「すまねえ」

開口一番、らしくもない小声で謝罪の言葉を呟くゴドーさんに、僕はマスクを渡しながら、微笑んでみせる。

「大丈夫」

そして汗にまみれたベッドから彼を引きずり出し、風呂上がりに二人でコーヒーを飲む。

その内に、彼は徐々に自分を取り戻し、いつもの朝の時間が流れ始める。




闇は時に
不穏な夢を連れてきて
貴方の足首を絡めとり
貴方を連れ去ろうとする。

嗚呼。

そんな時はいつだって暗闇の中で僕に縋って。
躊躇も謝罪も要らない。
僕はその度、貴方を僕の熱の中に導いて、闇を追い払ってあげる。




堕ちるなら、
闇じゃなく
夢じゃなく。

僕に、
堕ちて。





fin.
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