深緑の国
□Please…
2ページ/4ページ
開けたままであるらしいドアの向こうから、柔らかな歌。
ゴドーさんは目覚めると、その朝の気分を反映した曲をかけながらコーヒーを淹れるのが習慣だ。
今日は洋楽。
ゴドーさんの好きな曲だ。
…気分は良いようだ、と判って、何とはなしに笑みが浮かんでしまう。
『…I can't breathe
until you're resting here with me…』
その歌を知らなかった僕に、彼は歌詞を教えてくれた。
悲しい失恋の曲。
一人残された女性の心境。
今僕は失恋中じゃない。
それどころか今までで一番幸せな恋愛をしていると思う。
けれど今の僕に、何故かこの歌は染みる。
隣室から漂ってくる香ばしいコーヒーのアロマに浴しながら、僕は布団をキツく抱き寄せた。
(……ゴドーさん…早く、僕のところに戻ってきて)
閉じていた瞼にぎゅ、と更に力を込める。
→