09/24の日記
10:01
ダチュラ(歪アリ)
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ダチュラ【迷う時も】
おばあちゃんの家の裏庭で、白いラッパみたいな形をした花が、今を盛りと咲き誇っている。
私はそれをなんとなく眺めながら、おばあちゃんとお茶を飲みながらカボチャ味の羊羹を食べていた
「亜梨子はエンジェルズトランペットが好きなの?」
「え?」
突然話しかけられてビックリすると、おばあちゃんが朗らかに笑う。
「あの白い花。チョウセンアサガオとかダチュラとかとも呼ばれるけど…天使のラッパ、って可愛いでしょう?」
「うん…あれ、キレイだね」
「でしょう?あなたのお母さんがね…植えたの。“迷う時も”という花言葉も気に入っていたようね」
「…そっか」
今では…あれから2年以上経過した今では、お母さんの話はこの家のタブーではなくなっていた。ふとした時の会話に出てくるお母さんは、私のお母さんというより…昔この家に住んでいた優しい少女だったけれど。
「迷う時も、か」
あの後、帰ってきた叔父さんと一緒に3人で夕飯を終えて、私は一人部屋に戻っていた。
チェシャ猫がころころとベッドで遊んでいるのは、なかなか可愛らしいと思う。ぼんやり眺めながら、昼間聞いた花言葉をなんとなく口にした。
私の声にぴくりと反応したチェシャ猫が顔を上げる。
「なんだい、アリス?」
「ううん、なんでもないの」
笑って肩を竦めると、少し首を傾げた猫はするりと私の傍に来た。
「きみが迷う時はね、アリス。ぼくらが一緒にいるから心配しないんだよ」
歌うように言って、猫は笑う。
「久しぶりに‘あっち’に行くかい?女王たちも会いたいようだよ」
「うん…うん、そうね、久しぶりに会いたいな」
迷う時は、あなたたちがいてくれるから。私は前を向いて歩いていけるのね。
優しいヒトたちに会うために、私はチェシャ猫の温かな手を握り、目を閉じた。
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いつだって歪みの国の住人は、アリスの支え。
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