10/02の日記

07:41
フウセントウワタ(歪アリ)
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フウセントウワタ
【夢にあふれた】


久しぶりに歪みの国を訪れたアリスを、住人たちは喜び勇んで飛び跳ねるように(女王は本当に飛びついて)歓迎した。

「アリス、わたくしたちのアリス!元気そうで何よりだわ!」

「うん、ありがとう、女王さま」

一人一人と言葉を交わしながら、バラ園へと歩を進める。今を盛りと咲き誇る秋薔薇に彩られたテーブルには、ほかほかと湯気を立てるスコーンや紅茶、プチケーキ、サンドイッチ、そして何故かクリームシチューが所狭しと並んでいる。

「わあ、素敵!」

「アリス。さあ、こちらへ」

ビルが引いてくれた椅子に腰掛けると、帽子屋がミルクティーをカップに注いでくれる。

「みんなの分は?」

「これは全部アリスのために作ったのですよ」

「みんなでお茶会がしたいな。カップ、もうないの…?」

そのとき、ゲコゲコという鳴き声と共に給仕姿のカエルたちがトレイにたくさんカップとソーサー、そしてティーポットをのせてよたよたと駆けてきた。

「アリス、わたしたちのアリス!あなたが望むなら!」

はぁはぁと息を切らせながら紅茶を配りはじめるカエルたちに、おろおろとアリスは立ち上がる。

「手伝うわ」

「いいのです、アリス。彼らは喜んでやっているのですよ」

ビルがアリスの肩を軽く叩き、アリスは仕方なさそうに座る。その隣に、当然とばかりに女王が座った。もう一方の隣には、チェシャ猫が座る。
次々に(給仕を終えたカエルたちも)席につき、最後にはグリフォンが空から舞い降りて、歪みの国の全員が揃った。

夢のような一時。
悲しみに彩られていたあの時とは比べものにもならない、喜びと楽しさとあたたかな夢に溢れた場所――。

もう歪ませない。
もう忘れない。
亜梨子は心に誓うのだった。

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