やばい
一瞬今俺
息の仕方が分からなくなった
空気中で溺れたこの空間に溺れた
心臓がこれでもかってくらいうるさくどくんどくんいってる
うわああ 俺青くせえ






あいつと二人きりの夜
なんかえろい言い方したけど只単に俺の親が出張でいないから夜ごはん作りに来てくれただけど
こればかりは図々しい親に感謝だ

作ってくれたカレーは死ぬほどうまかったんだろうけど緊張して味を楽しむこと忘れてたどうしようどうしよう
この状況をどうしようどうしよう










『俺、お前が好きだ』







ってこれ俺のセリフじゃないからね今テレビのスピーカーから流れてる音だからね
てか何このドラマ 千鶴が毎週見てるからってサッカーの試合から変えられちゃったけど何狙ってるのかこの俺の状況に
夜に俺の家で
二人っきりで




え?

もしかして
もしかしなくても









これは



告白のチャンスなんじゃないか









いやいや待て俺!幼馴染みというおいしい関係を壊したくなくて今まで心の中に留めてきた辛抱はどうなる!
こんなとこで壊してしまっていいのか
お向かいさん同士というおいしくもありもどかしくもあって物心ついたころから一緒にいたこの居心地のいい

この位置を

壊してしまっていいのか





それが怖い





何度もあったチャンスを無駄にしてきた若かったあの頃
今ではそのチャンスも変な先輩とも言えないやつらやこいつの兄に邪魔されて滅多に無くなりここまでのヘタレキャラを確立させられちまった

けどこの俺の小さな胸にはおまえへの思いがいっぱいいっぱいで溢れてるんだぜ!
この思いを一体どうしろと言うんだ!






そんなこともんもんと考えてる俺の横で千鶴は真剣にテレビ画面に映る

映像を写している
心なしか大きな瞳が潤んでる気がするけどえ?もしかして泣いてんの?ドラマで?
俺が笑ってそう聞くと千鶴はうるさいなあ違うもんと弱々しく鼻をすすりながら慌てて涙を拭った
かわいいやつ すぐそうやってテレビでも他人事でも何でも泣く涙脆いこいつ
かわいいなあ 抱きしめたいなあ 押し倒したいな


うあ!やべ本音がうわあ、今の最後のやつは聞かなかったってことで!






『狂おしい程にお前が 好きだ』





そのテレビの音声にさらに千鶴の瞳に潤いが増した
てか何千鶴こんなんで感動してんの
こんな告白がいいの
左之先生だってこんな臭いセリフ言わないよ
けど俺だったらお前の為に言うよどんな痒くなるセリフだって言ってやるよお前が喜ぶなら俺
だから
だからやっぱり俺














告白していいかな














「ちづる」








「ん?」














「すきだ!」










「うん、僕も」













「へ?」




「僕も好きだなこのテレビ」




「沖田先輩!?」



「なっ、な」


「そうかなあ 僕はこいつの嘘くさい痒いセリフからして無理だけど」


「薫!?」




「まあ確かにうそ臭いってとこは僕も同感かな」


「へえ 珍しいじゃないか沖田
お前と僕の意見が一緒だなんて」




「お、お前らどっから…」




「はい平助 借りてた漫画
あと続き貸してね」




「千鶴 父さんがお前をよんでるよ」




「うん?わざわざ迎えに来てくれたの?」



「夜も危ないしね 帰ろうか



ああ 平助
いたの」


「平助ー 漫画の続きはどこにあるのー

ここかな?わあカレーだカレーだ」










いやああああここ俺んちだから!
つか俺んちお前んちの向かいだから!
危なくないからね!いや俄然俺がちゃんと送るからね!俄然の使い方ちがくね俺!
てこら総司鍋の中に漫画有るわけないだろ勝手にひとんちの米を食うなああ!!
















ああ
やっぱりおいしいチャンスはそうそうないらしい



ドラマの様にかっこよく臭いセリフを囁くのはまだまだ俺にはほど遠いのかもしれない

























(ドラマみたいな 青い春真っ盛り)
















平助くん!




なあに千鶴





あのドラマ今度貸してあげるね!
好きだって言ってたから





ああ
うん


やっぱまだまだほど遠そう














拍手ありがとうございました!

2010. 05.05 さくら


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泣いて喜びます(^o^)



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