桐青

□それは歪だがきっと素晴らしいことだ
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―まだまだ坂道は続くけど、君が居れば乗り越えられるよ。



 









それは歪だがきっと素晴らしいことだ 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

最近、俺の一つ上のピッチャーの先輩の元気が無い。

その理由はこの桐青高校野球部に所属している者達にとっては、周知のことで。

解決法なんかないよ。

準さんが自分で野球やるって、奮起してくれなきゃダメなんだもん。


遡ること夏大二回戦のあの日。

控えの捕手として出場した(出番は無かったが)仲沢利央はベンチから、チームメイトの逞しく大きな背中を誇らしげに見守っていた。

結果は―



強豪桐青高校の夏は二回戦で当たった新設の公立高校に敗退し、幕を閉じた。


―こんな結果、誰が予想できるもんか

和さんも慎吾さんも山さんも迅もタケさんも・・準さんも。





試合終わった後の大きな背中が、次々に崩れ伏していく中バッテリーのあの二人の涙には、きっと二人にしか分かちあえない悔しさがあったんだろうな。

和さんと準さんの意気の合ってたバッテリーはアレで最後、になる。あんな終わり方って無いよ。
俺だって先輩たちともっと野球したかった・・・。
 

*

 
夏大敗退後、準さんはちょこちょこクラブに来なくなった。
うん、かれこれもう数週間近く来ていない。

心配したタケさんが準さんにメールしても来ないし。

俺のメールには返事も返してくれない。

そんな日々が続いて、捕手として俺は準さんに部活に来て貰うべく、返事して貰えないメールは止めて、電話をすることにした。



あーもォ〜準さんでるかなァ・・。
あんだけメールしても何も返してくれないんだからぁ!!繋がらない・・「・・・・もしもし、」


「え、え、じゅ準さん!?」

「おう。りおー、あー最近部活出て無くって監督怒ってるか??」

「え、あ、やあァそれがねー監督最近腰痛めたみたいでェ、来てないんスよぉ。」

(電話繋がったのは良かったケド・・、なんか、なんか懐かし過ぎる!!うん、会話はまともできる!このまま地雷を踏まずに・・)

「あーそっか。怒られずに済みそうだな・・あー、あのさ、和さんはグラウンドに顔出してる?」

「(地雷きたあぁあ!!)い、いやまだ着てないっスねぇ・・」

「そうか。」

「『・・・・・・・』」

うーん・・妙な沈黙。
突き破るのは俺、だよね?

「あ、あのッ俺、俺でよければ、何時でも、受けますょ・・和さんの代わりにはなれないッスけどォ・・」

「・・・・お前なんかじゃ俺の全部、受けとめんのなんかッッ ぜってェー無理だ!!簡単に、そんな、言うな・・」

ぜってェー無理だ!!の台詞が太線になり、更に下線が引かれてしまうほど力の篭った拒絶。



さすがの利央も、準太の拗ねた勢いの延長の八つ当たりには腹が立った。



俺は、俺は準さん励まそうとしてて、ていうか準さんと野球やりたくて、俺の頑張り見て欲しくって・・・
そんで、そんで・・・

「準さんは・・準さんはッ!なんで、そんな和さん、和さんって和さんの事ばっか、和さんとじゃなきゃあ野球できないのかよッ!!!!
俺らチームで野球やってんじゃないスか!!いつまでそーやって拗ねてるつもりなんですか!!?チームメイトにも迷惑かけて、、俺、付き合い長いからこそ言いますケド次の主軸は準さんたちなんですよ!?しっかり、してくださいよォ・・・」
最後の搾り出すような声に続いて、涙が堰を切って溢れだした。



だかここで負けん気の強い準太が黙っている筈が無い

「オイ。言うだけ言って泣いてんじゃねェよ。和さんなしじゃ野球できないなんて、んなこたァ言ってねェだろーがッッ!!!別に和さんにそこまで執着してねェよ!!!つか、な。 1年で、控えで、何もしてねぇお前にはまだ分かんねーよ!!3年とできる最後の大会があんな終わり方でよ、俺はもっと投げるつもりだったんだ!!!お前なんかの何十倍も悔しいんだよ!!お前なんかが分かった様な口、きくな!!!!」

ズキリと利央の心は痛み出す。

「控え、出番無し」はささやかながらも利央が気にし続けていたキーワードなのだから。それを大好きな先輩に言われてしまった。

実際その台詞を言い終わったあとに、言い過ぎた、と若干準太は後悔した。


「もッ・・いいスよ!!!準さんにとって俺ってその程度のチームメイトだったんですね・・ッ!」

「オイ、俺がお前をどう思ってるかとさっき言ったことは関係ないだろが!!」

「・・・今日は、電話ここまでにさせて貰います。なんかすんまセンでしたァ!!!」

ブツッ

「切れた・・・」


ベッドにうつ伏せに倒れこみ、脱力。

んだよ、俺だって、和さんのこと以外、これからのチームのこと、利央、お前のことだって つかお前のことスゲェ考えてたよ。

自分の駄目なとこは分かってる。

なあ利央、俺あんなこと言ってさ、俺に失望したか?俺のこと幼いヤツだって思った?

なんで俺、お前からの電話嬉しかったのに、お前と野球したいのに、素直になれないんだろう。

お前の優しさに甘えてるよ。もう溺れかけてるよ。
分かってるよ。










ねえ、もっと この姿を焼き付けたいのに、目を瞑らないでよ



            
何時までも瞑っているつもりならば、目覚めのベーゼを君の瞼へ届けるよ―・・
だからお願い、目を覚まして??





*
*

なんか3-4に行き詰ったので、前から書きたかったネタを引きずり出しました〜。
途中読みづらい非常に。
だけど達成感でいっぱいなので、後から修正しようと思います。あはは


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