cacao(桐青パロディ)

□2:回り道午前
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司教さんも肉屋も兵士もパン屋も皆

それぞれが胸を膨らませ

鮮やかな想像を抱いては

自分が主役のストーリーに溺れる中で


静かに運命は引き寄せあうだろう

予想も出来ない出会いと別れ

後悔しないよう噛み締めようか?


そう、

人と人が巡り合う事には

必ず何か縁があったということだ


曖昧で不確かな形無き力で

人はきっと繋がっている

どこまでも





回り道午前





自分が待ち遠しく思っていればいる程、時の流れを焦れったく感じてしまうものだ。
まだ今日は前日。まるで新しい秘密基地となりうる場所を見つけた無邪気な少年の心持のように逸る気持ちが胸の辺りを占めているのは何年ぶりだろうか?新鮮な気持ちに酔い痴れつつも意識しなければ制御できない口角の角度に気を遣って、俺は駆り出されるまで時間を潰すべく澄んだ空の下、祭の準備の放送がかかるの待って街を歩いていた。

俺等若衆は午前には矢倉の組み立て、松明様の松脂の収集、食料の運搬、午後からは協会の各大清掃(勿論男がのんきに箒を掃くわけがあるまい、梯子等を使用しての少し危険な掃除を任される)、大量の小麦の運搬(これが死ぬほど辛い)その他諸々数えればきりが無い程の力仕事を任される・・。
午前中はまだいいが、午後の実践意識の筋トレ並みに乳酸の溜まるあのスケジュールは正直どれだけ鍛えられた体を持つ男でも過酷だと感じるのではないだろうか、そう考えずにはいられない程地獄だと思える。・・・これは決して自虐的ジョークなんかではない。本気、あくまで本気の訴え… そんな過去の経験を思い返していると、手入れなど全くされてもいないちゃちな造りのスピーカーから歯切れの悪い音が漏れ出した。

『ザザッ―・・・ザ、え、えー手の空いている、男性はー―・・ザッ・・隊関係なく、急いで・・ミエル広場へ・・集合してください―・・ザッ、もう一度繰り返します、』

来た来た来た・・・仕事が。まあ午前は可愛いもんだ。気合入れて頑張ろう!!どこで俺の可愛い恋人候補諸君が見ているか、分かったもんじゃないからな!・・・動機が不純すぎる気がしないこともないが、まあそこはご愛嬌で!
昨日から相も変わらず札引きのことばかり考える煩悩を携えて集合場所へと足を運んでいった。
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