colore

□【colore】第26話〜第70話
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ドクン…ドクン…

煩いくらい高鳴る鼓動
それに合わせて響く頭痛
浅い呼吸
胃の中がぐちゃぐちゃに掻き回されてるような吐き気
地面が揺れる


一つの扉の前で、みちるは何かを必死に耐えていた






【第27話】






コンコン…
「失礼します。9代目」

家光が静かにノックをし、中へ入る
みちるはそれに続いた

ディーノは仕事があると言ってすぐ行ってしまった
9代目のじぃさんによろしくと言いながら


家光の背中越しから伝わる優しい気配に、みちるは息を飲んだ

広い室内
大きな窓からは柔らかい陽が射し、部屋全体を優しく包む

家具や飾られる美術品は、どれも最上級なものばかりだが、決してくどくなく、とても上品な感じだった


部屋の中央にはアンティークソファーが置かれ、そこにゆったりと座る一人の老人


『……9代、目…
お久し、ぶり…です…』


彼こそがボンゴレファミリー9代目ボス



うまく言葉が出ないみちる
顔を合わせるのは一体何年振りか…


「緊張してるね、みちる。らしくないじゃないか」


目を細くする9代目
みちるの目頭に熱が集まる


この方は…本当に変わらない

マフィアのボスだなんて誰が思うだろう


『9代目…私…』


「みちる。よく顔を見せてくれ。さあ、おいで

よく来たね。会いたかったよ」


両手を広げる9代目に、みちるは吸い込まれるように抱き着いた


ボロボロと溢れ出す涙

9代目は静かに頭を撫でてくれた



懐かしい…
悠成とはまた違う優しい手
この手にずっと守られて来た

守るべき主なのに…



今までの、溜まりに溜まった胸の内を吐き出すように、みちるは声をあげて泣いた



涙を見せる事はあっても、9代目や家光の前で、こんな風に取り乱すのは極めて珍しい


時計の針が一回りする頃、ようやくみちるは落ち着きを取り戻した



『スイマセン…9代目。取り乱して…。
もう大丈夫です』

グスっと鼻を啜りながらみちるは頬を染めた


「構わないよ。
さあ、お茶にしよう。
カフェラテだったかな、みちるは」


『ハイ。あ、そうだ。コレ日本のお土産です』



そう言ったみちるの顔にはいつもの笑顔があった



そして…


『9代目』

引き締めた顔で向き直る

持っていた鞄から取り出した箱に、後ろに立つ家光の気配が僅かに揺れた


『9代目。コレを…お返しします』


それはみちるの愛銃を納めた箱








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