colore
□colore
2ページ/3ページ
Bar.canon
『いらっしゃいませ!』
カランと小気味よい音を鳴らせドアが開くと、仕立ての良いスーツに身を包んだ赤ん坊が立っていた
【第107話】
落ち着いた木彫の明るい店内に、悠々とエスプレッソを嗜む赤ん坊・リボーン
この異常な光景は、ここcanonではいたって日常
『ね、リボーン
このビスコット私が焼いたんだけど、どぉ?』
エスプレッソに添えたビスコットをリボーンが口にするのを確認すると、みちるは身を乗り出して聞いてきた
ビスコットとは、2度焼きした固いクッキーを言い、そのままでも美味しいが、エスプレッソに浸し柔らかくして食べるのがイタリア流
「ああ、美味いぞ
けど店に出すにはもう少し甘くした方がいいんじゃねーか?かなり甘さ控えたな」
そう言いながら、二口三口と進めていくリボーン
味は良いようだ
『アレ?そっかなー』
首を傾げるみちるに、横にいたフェルッチオが笑いながら加わった
「みちるの作るお菓子は昔から甘さ控え目なんだよね
本人は甘党なのにねぇ
確か悠成さんも甘党だったよね?」
『うん、悠成タバコ凄かったけど、いつもチョコも持ち歩いてた……』
少し考えるみちる
『…あ』
やがて何か閃いたように小さく声を上げた
「思い当たる節があったのか?」
『あ〜うん、はは…』
リボーンの問い掛けに、みちるは苦笑し、少し躊躇い気味に答えた
『…昔…、XANXUSとね、よく一緒にお茶して、私お菓子作って出してたの
けど、XANXUSは甘いの好きじゃなくて、甘さもっと控えろとか、よく文句言われてたんだ
……けど…文句言うのに、結局食べてくれてたんだよなぁって、思い出した』
XANXUS…
その名前に、リボーンとフェルッチオは小さく反応した
みちるは最初こそ躊躇ったものの、表情も口調もいつもと変わらない様子だった
むしろ過去を懐かしんでいるような…それらを愛でるような…穏やかに落ち着いた瞳
「みちる…お前…」
何かを言いかけたリボーンだったが、みちるの真っ直ぐな瞳に口を閉じた
何か決意した強いものを感じたのだ
それはフェルッチオも同じで、2人はみちるからの言葉を待つ事にした
→第108話へ