colore

□【colore】第1話〜第25話
2ページ/27ページ



“なぁ、みちる。アイツを例えるなら何色?”






【第1話】





―――…な…んで…?

どうして…


少女の視界は黒と緋色

覆いかぶさる大きな影は、ピクリとも動かない

小刻みに震える小さな体と手でしっかりと抱き抱えながら、少女はその奥の大柄な男を睨みつけ、搾り出すように声を上げた



『――――っXANXUS(ザンザス)!!』



がばっ!


『…はぁ…はぁっ…』


……夢…?

…夢に、決まってるじゃない

久しぶりに見た…


薄暗い室内

少女の耳に入るのは、自身の荒い呼吸…そして高鳴る鼓動


なんとか呼吸を整えようと数回深呼吸をし、少女は枕元の時計を一瞥した


5時…


カーテンを開き、東の方角に染まる橙色を見て、朝方だとぼんやり納得した



ジワリと汗ばんだ肌にへばり付く、色素の薄い細く癖のある髪を軽く払い、キッチンに向かう


『ふぅ…』

冷蔵庫からよく冷えたミネラルウォーターを取り出し、渇いた喉へ一気に流し込んだ



『…ほんと…
あんな夢久しぶりに見たな…』


8年も経ってるのに…

少女はクシャリと髪をかき上げながら、ついさっき見た夢を思い返す…

あれは過去の出来事



――――…この…っカスがぁっ!!


やめるんだっ!!


――っいやぁぁっ!!!


『…………』


―――…いいかい?
お前はまだ幼い

日本に帰り、普通の生活に戻りなさい

住む所も、お金の心配もいらない

学校にも通うんだ



悠成もそれを望んでた筈だ



いいね…?みちる…




『…9代目…
悠成……』



彼女の名は真崎みちる

17歳


カフェでアルバイトをするごく普通の女子高生…


しかし彼女には、決して軽々しく言えない大きな秘密があった




みちるは静かに目を閉じた

身体中を、様々な激情が駆け巡っているような気がして、それらを押さえ込むように、みちるはまたミネラルウォーターを流し込む




8年…か


ねぇ、悠成

私…約束守れてるかな?



心の中だけでそう呟き、ゆっくりと目を開くと、今度は唇だけ動かした





XANXUS……と。







→第2話へ
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ